ホン・ズーシュアン監督が、脚本の構想から完成までに9年をかけたという意欲作。『96分』(台北・高雄間の新幹線所要時間であるという)とタイトルにはあるが上映時間は約120分、つまり“96分”前後の描き方も丁寧だ。「緊迫の場に立ち会っているようなスリル」もあるけれど、人物描写、人物間の人間模様にも深い奥行きが感じられる。

先に触れたように、主な舞台となるのは台北から高雄へ向かう台湾新幹線の車内。爆弾処理専門家のカンレン(リン・ボーホン)は妻(ビビアン・ソン)と共に新幹線のなかにいた。が、そこに元上司から「爆弾が仕掛けられている」との連絡が来る。しかも新幹線を止めると爆発するらしい。だから高雄に到着するまでの間に爆弾を処理しなければ、新幹線もろともこなごなになってしまう。いきなりカンレンは、新幹線や乗客の安全をすべて握る立場となった。あまりにも突然だし、理不尽かもしれない。だがカンレンは爆弾処理専門家なのだ。恐怖が先に立ったか、「プロとしてやらなければ」と奮い立ったか、そのどちら寄りの気分だったのかなと思いながら視聴するのも一興だろう。もちろん「犯人はなぜこんなことをしたのだろうか」とも考えつつ……。
ここで使われている新幹線が実際の車両なのかロケのために作られたものなのかは私にはわかりかねるが、まるで日本の新幹線そっくりで、それがこちらに一層のリアリティを呼び起こす。「自分が新幹線の乗客だった時に、こんなことが起こったら、いったいどうなってしまうのだろう」、それに対するヒントも得ることができるはずだ。
映画『96分』
3月13日(金)より、シネマート新宿 ほか全国公開
監督:ホン・ズーシュアン 製作:ジェフ・ツォウ
出演:リン・ボーホン、ヴィヴィアン・スン、ワン・ポーチエ、リー・リーレン
2025年/台湾/中国語/120分/5.1ch/スコープサイズ/カラー/原題:96分鐘/配給:ハーク