映画『幕末ヒポクラテス』、故・大森一樹監督があたためていた企画。日本の現代医学の夜明け前を描く

 生前の大森一樹監督があたためていた企画が、遺志を継ぐ面々によって遂に映画化された。監督は、大森監督の助監督を務めていた緒方明。原案は稲垣浩監督、森繁久彌と原節子が主演した『ふんどし医者』であるという。

 舞台はタイトル通り、“幕末”。今からざっと170年ほど前のことだ。当然ながら、明治以降当たり前にあるであろうものも、当時はない。寒さや暑さに耐えて、基本的に明るくなったら起きて、暗くなったら寝る。よそからの情報を得るのは、せいぜい噂話といったところか。病気に関しては、なんというのだろう、かかってしまったら、場合によってはそこで人生が終わりみたいなところもある。

 だが、西洋医学を学んだ蘭方医・大倉太吉は、医学によって直せる病はあるということを人々に教え、それを全身で実践する。「医学」の概念が当時の一般のひとたちにあったとは疑わしいが、まじない師とは異なる位置にあるということぐらいは理解できたであろう。そして彼のライバルとして、“どんな病も葛根湯でOK”的な旧来の漢方医・玄斎が濃い味を出す。こちら、適当とかいうよりも、「プラシーボ効果」、「病は気から」を体現するキャラクターという印象を受けた。時代が時代だけに、貧富は激しいし、そのほか、あえてここでは描かなかったであろう人々への差別もあったと思われるが、「人が苦しんでいる時は、苦しみを和らげるようにつとめるが当然ではないか」とばかりに、太吉は、いわばノブレス・オブリージュの精神を発揮する。

 その太吉を演じるのは佐々木蔵之介、また大森監督の『ヒポクラテスたち』で映画デビューを果たした内藤剛志が玄斎を演じる。やはり『ヒポクラテスたち』に登場していた柄本明も出演、『風の歌を聴け』に出ていた室井滋がナレーションで参加するなど、大森監督に見いだされた面々が関わっているのも美しいし、使われている音楽が非常にコンテンポラリーであるのも興味深く感じられた。

映画『幕末ヒポクラテス』

5月8日より新宿ピカデリー ほか全国ロードショー

監督:緒方明
原案:映画「ふんどし医者」(C)1960 TOHO CO.,ltd.
製作:「幕末ヒポクラテス」製作委員会
配給:ギャガ
配給協力:大手広告
(C)「幕末ヒポクラテスたち」製作委員会

公式サイト
https://gaga.ne.jp/bakuhippo_movie/