非常に静謐な一作である。主人公は、新疆(しんきょう)ウイグル自治区の辺境の村に暮らすカザフの少年。この自治区には、ウイグル人、カザフ人、キルギス人などのトルコ系民族が多く住んでいる。孤独な彼の毎日をいやすのは、植物だ。“ボタニスト”(植物学者)というのは、伯父が彼につけたあだ名のようなものだ。が、ある日、そこにハン族の少女がやってくる。ハン族といえば、カザフ人とは逆に、中国では大メジャー、支配的存在だ。大人どうしであれば、越えなければいけない障壁の前に躊躇するところもあったかもしれないが、少年と少女はごく自然に意気投合し、一緒に過ごす時間を楽しむようになる。が、彼女が大都会の上海の中学校に進学するときがきた。村と上海の距離はなんと4800kmもある。少年は辺境の村を離れることができない。一時期すっかり忘れていたであろう孤独が、成長した彼に、より冷たく、きつく迫ってくる。

「少年と少女の出会いと別れ」がモチーフなのだろうが、影のトリッキーな用い方、風景、色合い、演出(馬に注目)など、ひとつひとつが新鮮だった。なんともいえない微妙なあきらめをラストの場面も印象に残った。ジン・イー監督はこれが長編デビュー作にあたるという。新疆ウイグル自治区出身であるというから、幼少の頃の記憶も物語に反映されているのかもしれない。ビー・ガン監督がアドバイザーとして参加しているところにも注目したい。
映画『ボタニスト 植物を愛する少年』
5月15日から ヒューマントラストシネマ有楽町 ほかにて公開
監督:ジン・イー
配給:リアリーライクフィルムズ
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