安積遊歩と安積宇宙の親子をフィーチャーした一作。ともに骨が弱いという特徴を持って生まれ、優性思想の撤廃、子育て、障碍を持つ人の自立生活運動、共生などに情熱を注いできた。同じような特徴かどうかはわからないが、骨形成不全症であった名ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニ(私は彼のレコードの解説文を書いている)が思い出された。つまり、力強く、前向きに、今ある状態で咲き誇るということだ。

安積遊歩の話の面白さ、例えの巧さ、テンポの良さ、活舌の良さ、周りの人をどんどん引き込んでいくパワーには感服させられるし、身体のコンディションゆえに学ぶことや恋がストレートにはいかない状況になったことも率直に語られる。なかでも優生保護法を変えるきっかけとなった政治家への一言は、この映画のクライマックスの一つだろう。
安積家の母はアメリカ滞在経験があり、娘はニュージーランドに住んでいるが、そこで「いい刺激」を存分に受けてきたのではないかと思う。飛び出したことで得た視野の広さが、「声のデカいものが勝つ」、「力に訴える者が勝つ」島国への、本当にストレートな異議になっていると感じた。ほか、バスに車いすコーナーができるまでにこんなに煩雑な段階をふまなければならなかったのか、など「障碍を持つ人と日本社会の歴史」を知らせてくれるような描写もあり、勉強になった。
監督はこれがデビュー作となる淺野由美子、撮影・編集・プロデューサーは『どうすればよかったか?』の藤野知明。安積遊歩の実妹の笑顔もいい。
映画『遊歩 ノーボーダー』
5月23日(土)より[東京]ポレポレ東中野、5月30日(土)より[大阪]第七藝術劇場ほか全国順次公開
音楽:はるの 題字・イラスト:藤原千尋 編集:秦岳志 整音:川上拓也 撮影:武田春乃 制作・撮影・編集:藤野知明 監督・撮影:淺野由美子 製作:動画工房ぞうしま 配給:東風
出演:安積遊歩、安積宇宙、神野愛子
2026年|日本|82分~|DCP|ドキュメンタリー
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