映画『シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE』、ひとりの女性による、喪失と再生の物語。金馬映画祭の優秀企画に選出された一作

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 吉本ばななの短編小説集「ミトンとふびん」(新潮社刊)に収められている「SINSIN AND THE MOUSE」が、日本と台湾の合作として映画化された。私は不勉強にして原作を読んでいないのだが、なんというか、じんわりと温かみが伝わってくる小品なのだろうな、という印象を受けた。音楽、古びたレコード、洒落たカフェなどが洒落たアクセントのように用いられているのもいい。大きく受けを狙うところはないけれど、人と人の間のさりげない心使い、呼吸、まなざしのやりとりなどにしっかり着目しながら、丁寧につづられた一作である。

 ちづみ(岸井ゆきの)は母を亡くし、そこから癒えていない。自分の経験からいうと肉親の死から立ち直れることはないのではないかと思う。その事実と連れ添って生きるしかない。だが、生きていれば必ず日付が変わる。それに向かってどうしていくのか、ということだ。ちづみは友人の誘いを受けて、台湾を訪れることにした。そして、とあるきっかけによってシンシンという男性(ツェン・ジンホア)と出会った。彼の父は日本人、母は台湾人であり、日本語も流暢なので、やがて、ちづみとシンシンの心の距離はどんどん近づいていく。ものすごく雑に言えば、「前向きに生きていこう」という気持ちに、ちづみは明らかに、シンシンによってさせられた。そこが温かい。人と人とのふれあいの原点を、じっくりと、おおらかに提示されたような印象を受けた。

 監督・脚本・編集は真壁幸紀。金馬映画祭Film Project Promotion(FPP)部門 優秀企画に選出された一作だ。

映画『シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE』

6月26日(金)より新宿バルト9、シネスイッチ銀座 ほか全国公開

出演:岸井ゆきの ツェン・ジンホア
   藤原季節 中田青渚 柄本時生 伊勢佳世 / 飯田基祐
   リン・チェンシー エンジェル・リー / リン・メイジェン
   余 貴美子

原作:吉本ばなな「SINSIN AND THE MOUSE」(新潮社刊「ミトンとふびん」収録)
監督・脚本・編集:真壁幸紀
共同脚本:加藤法子
主題歌:藤原季節 asマサミチ「Let Me Feel You」 サウンドプロデューサー:TAKU Tanaka
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
2026年/日本/カラー/スタンダードサイズ/5.1ch/108分/G
(C) 2021 by Banana Yoshimoto All rights reserved. Japanese original edition published by Shinchosha Publishing Co., Ltd., Japan in 2021. The permission to use the original novel to produce this movie has been arranged with Banana Yoshimoto through ZIPANGO, S.L.
(C)2026映画「SINSIN AND THE MOUSE」FILM PARTNERS

公式サイト
https://www.culture-pub.jp/sinsinmovie/

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