小説家としてデビューし、39歳で映画監督第1作『11歳』を発表。韓国を拠点に、東アジアを舞台とする作品を発表しているチャン・リュル(張律)監督の近作2点が7月3日から東京・シネスイッチ銀座にて同時公開される。「どちらかひとつを見よう」と思っても、最終的には「もうひとつも見たい」という気持ちになる、そんな吸引力がある。作品名は『春樹』、そして『ルオムの黄昏』。ストーリーには特に関連性が感じられないものの、出演者は重複していて、つまり監督が最も信頼を寄せるキャストが集まっているということなのだろう。
『春樹』は第38回東京国際映画祭コンペティション部門で最優秀監督賞と最優秀男優賞を受賞した一作(その時の邦題は「春の木」)。主人公は春樹という女性。約20年間、役者として活動してきたが、仕事も恋愛もなんともすっきりしないまま、気が付くと37歳に。故郷・成都に20年ぶりに帰ることにしたのだが、なんというか、「ふるさとは遠きにありて思うもの」状態である。そこで彼女は、演技の恩師というべき存在に会うことにするのだが、その恩師に昔の面影はなく、認知症で言葉もままならない。二人の間で、恩師の息子が潤滑油的な存在感を放つのだが、「静かな展開の中に、深いニュアンスのこめられた作品」という、ごくありふれた形容が、こんなに当てはまる非凡な映画もなかなかないのではないかと私は感じた。

第30回釜山国際映画祭コンペティション部門の最優秀作品賞に輝いた『ルオムの黄昏』は、ダンサーの女性・バイのもとに、しばらく前に姿を消した恋人から、不思議な絵ハガキが届いたことをきっかけとして、物語が急加速していく。当然ながらバイは、その絵ハガキを手掛かりとして、恋人との再会へと動き出すのだが、なんというか、「探偵物語」に自分も立ち会っているような臨場感を感じた。2作品とも、バイ・バイホー、ワン・チュアンジュンの好演が光る。
映画『春樹』『ルオムの黄昏』
7月3日(金)より シネスイッチ銀座にて2作品同時公開
『春樹』
監督:チャン・リュル
出演:バイ・バイホー、ワン・チュアンジュン、リウ・ダン、ポン・ジン
2025年|中国|英題:Mothertongue|122分|カラー|北京語
『ルオムの黄昏』
監督:チャン・リュル
出演:バイ・バイホー、ワン・チュアンジュン、リウ・ダン
2025年|中国|英題:Gloaming in Luomu|99分|カラー|北京語
配給宣伝:サニーフィルム