映画『タービュランス 絶空16,000フィート』、物語の75%を高所で撮影。極限状況のなか、修羅場が繰り広げられる

 “タービュランス”とは、乱気流を示す。もちろん言葉そのものの意味もあるけれど、登場人物たちの関係も、乱気流という表現がぴったり。なお“16,000フィート”とは約4800メートルを示す。つまりそれほどの上空で、修羅場が繰り広げられるのだ。

 男・ザック(ジェレミー・アーヴァイン)は、突然亡くなった父から大会社を受け継いだ、いわばボンボン。不景気の世の中だということはわかっていて、まず利潤を大切に、思い切った措置をとることもできる。子供の頃から恵まれた暮らしをして、妻のエミ―ともとりあえずうまくいっている。が、雇われる者やその一家の気持ちなどには思いもよらず、なんというか、「自分が社会の頂点」という感じで生きている。しかも女性に対して気が多く、「俺のお飾り、俺の気の紛らわし」的に考えているところもある。世の中の誰もが彼のように経済的に恵まれているわけではないのに、世間の人々に心を寄せるというマインドが彼の中にはない。それが悪夢につながった。

 監督は、飛行機×サメのコンビネーションも斬新だった『エア・ロック 海底緊急避難所』のクラウディオ・ファエ。「イタリアの世界遺産ドロミーティ(ドロミテ)山脈を熱気球で横断する」さまを映画化する、というアイデアにも引き込まれた。果てしなく広がる空、どんどん遠くなっていく地面、包み込まれるような大自然は乗る者をエクスタシーに引き込むことだろうが、一度飛び立ってしまえば、その四方の、床つきの、決して広いとは言えない乗り場だけが「安全が保証されているはずの場所」となる。

 以降、「四方がだだっぴろいのに、実はまるで密室」という奥深いシチュエーションの中、ザックとエミー(ヘラ・ヒルマー)の夫妻、操縦士(ケルシー・グラマー)、そしてザックとは過去に何かあったらしいジュリア(オルガ・キュリレンコ)の4人が緊迫をつくる。なぜジュリアが合流できたのか等、詳述は避けるが、操縦士以外の3人のうち、「誰がいちばん悪いのか」が、話の展開によって移り変わっていく(ように感じさせる)演出にも唸らされた。あと、自然の脅威の描写も、音も含めてすさまじい。私は高いところが得意ではないので、これは画面なのだとわかっていても「ウッ」と来るところがあった。心臓の弱い方は留意されたしというところも、いくつかあるけれど、つまり、そのくらいのリアリティがあるのだ。

映画『タービュランス 絶空16,000フィート』

7月10日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷 ほか全国公開

監督:クラウディオ・ファエ 脚本:アンディ・メイソン 製作総指揮:バリー・ブルッカー 音楽:マーカス・トランプ 撮影:ハイメ・レイノソ
出演:ヘラ・ヒルマー、ジェレミー・アーヴァイン、ケルシー・グラマー、オルガ・キュリレンコ
2025年/イギリス・アメリカ/英語/カラー/シネマスコープ/95分/原題:TURBULENCE/字幕翻訳:額賀深雪 配給:彩プロ 映倫区分:G
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公式サイト
https://turbulence.ayapro.ne.jp/