イラク出身、現代はニューヨークを拠点とするハサン・ハーディ監督の実体験を基にした作品。脚本も彼が手がけている。

1990年代、独裁政権下にあったイラクでの物語だ。庶民は本当に貧しく青息吐息、だがそれでも権力者を称える、というか称えなければならない。それが独裁政権下の社会であるからだ。本当に食べ物もお金もない。だから心がすさみもするし、よりずるがしこく生きてゆくための知恵だけには長けた大人も登場する。もちろんどちらであろうが権力者にとっては良いカモでしかない。そのくらい社会に格差がある。さあ、その権力のトップに位置する独裁大統領は、自身の誕生日を祝うケーキを作るよう、国内の各学校に命じていた。砂糖はどうするんだ? スポンジは? と疑問になるところだが、とにもかくにも作ってお出ししなければならない。そうしないと非国民扱いされ、すべての光明が絶たれてしまうかもしれないのだから。
とある小学校で、“名誉ある”ケーキ係に指名されたのは、まだ9歳の少女ラミア。運がいいのか悪いのか、くじで決まってしまった。そこから彼女の奮闘が始まる。なんといってもケーキを作る素材がないのだ。「ないものはつくる」「こんな人はまだいないなと思ったら自分がなってみる」は人生の鉄則だと思うが、それにも限りがある。ケーキが作れたらまさに素晴らしい小国民、だがそれができなければ罰を受けるのだ。「自分だったらどうするか?」と、この少女の奮闘に自分の姿を重ね合わせる大人も多いことだろう。協力役のサイードや、ニワトリや猫の存在感にもぜひ注目してほしい。
なお、ラミアを含め、出演者全員、演技未経験者がキャスティングされているという。
映画『大統領のケーキ』
7月10日より 新宿ピカデリー ほか全国公開
監督・脚本:ハサン・ハーディ
配給:松竹
2025年|イラク、アメリカ、カタール|105分|カラー|シネスコ|5.1ch|PG12
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