タイトルは「役に立つ幽霊」という感じだろう。幽霊といえば、生きている人を驚かせたり怖がらせたりするのが定番であったはずだが、21世紀も4分の1が過ぎた今、それだけではあまりにも芸がない。もっと幽霊のいろんな形があってもいいではないか。

粉塵公害が問題視されている地域が舞台。夫・マーチは、妻・ナットを呼吸器疾患で亡くしてしまった。呼吸器のトラブルで死ぬのがどれだけつらいか、叔母をこの病気で失っている私にはリアルだ。息をするたびに悲鳴が出るほどの苦しみが走るのだ、だが息をしなければ死ぬ。ナットの苦しみを想像するだけでこちらはしんどくなる。が、夫の愛が通じたのか、妻は掃除機に宿る形で戻ってきて、さらに(いろいろあるがここはぜひ画面をご覧いただくとして)、「除霊」に取り組む。この展開がすごい。ひねりにひねったユーモアに、これは海外版の落語なのか、と思った。
監督は、これが長編デビューとなるラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク。アピチャッポンにつづく異才と呼ばれる気鋭で、新しいセンスの出現を我々はしっかり感じることができるはずだ。2025年、カンヌ国際映画祭の批評家週間でワールドプレミアされ(タイ映画としては初選出)、グランプリを受賞したともいう一作。ダビカ・ホーン(Instagramで1800万人を超えるフォロワーを持つ)が極めてシリアスに、クールに、ナット役を演じているのが、またおかしみを強める。
映画『ユースフル・ゴースト』
7月10日より 全国ロードショー
監督・脚本:ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク
出演:ダビカ・ホーン、ウィットサルート・ヒンマラート、アパシリ・ニティポン、ワンロップ・ルンカムチャット、ウィサルット・ホームフアン ほか
2025|タイ語、英語、イサーン語|タイ、フランス、シンガポール、ドイツ|130分|R15+|字幕翻訳:橋本裕充
配給・宣伝:SUNDAE(Powered by Filmarks)
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