“トレイル”とは山にある、舗装されていない道といえばいいのだろうか。この映画は、香港に存在する4大トレイル・コース(総距離298km=フルマラソン7回分、獲得標高14500m)を制限時間以内に走り切らなければならない、というレース「香港フォー・トレイルズ・ウルトラ・チャレンジ」に焦点を当てたドキュメンタリー。開催期間は旧正月の三日間。60時間以内にゴールした者には「FINISHER(完走者)」、72時間以内の者には「SURVIVOR(生還者)」の称号が与えられる。

とんでもない、普通なら足を運ばない(運べない)ようなところを、おそらく睡眠や休息を最小限にして(だが健康に害のないようにはコントロールして)、初めて挑む者は挑み、リピーターは前回よりもよりよい記録を目指して走り切る。カメラは、その「トレイル」からの風景も捉えているのだが、これは実に美しく、時に苦闘にゆがむ参加者たちとコントラストを描く。
私は布団から出ることにすらめんどくささを感じるものぐさ、しかしここに登場する挑戦者たちの、その日に向けてのコンディション調整、行為中の「すべてをかなぐり捨てて走行に集中している」という感じの表情、達成した時に全身から放たれるエクスタシーに、しっかりと心は動かされた。この挑戦者たちは、このレースに参加することによって、精神的な黄金を間違いなく得ている。それに比べて、果たして自分は充実しているのか? 参加者たちに問われているような気がした。
監督は香港に生まれ育った英国人のロビン・リー。それもあるのか英語の割合が圧倒的に多い。香港の地図を見ながら、このチャレンジがいかにすさまじいものか、思いをめぐらせてみるのもいいだろう。
映画『フォー・トレイルズ 限界を超えてゆけ』
7月10日(金)より ヒューマントラストシネマ渋谷、シネスイッチ銀座 ほか全国順次公開
監督:ロビン・リー
エグゼクティブ・プロデューサー:アリソン・フリードマン
プロデューサー:ベン・リー
2024年/106分/香港/原題:香港四徑大歩走/英題:Four Trails
日本語字幕:増子操 字幕監修:鏑木毅 映倫区分:G
配給:ザジフィルムズ
(C) Lost Atlas Productions