原題は『ENZO』。男性の名前だ。このエンゾが物語の主人公である。南フランスの「風光明媚」という感じの街で、経済的に恵まれた家庭に生まれ育ち、つまりお坊ちゃんとして毎日を過ごしている。ただ、16歳になっても「自分の居場所たりえるところにまだたどりついていない」ということはわかっていた。学校にもなじめないし、建築現場で見習いとして働くことがある意味、モヤモヤの解消になっていた。ある日、そんな彼の視野に、ウクライナ人移民の青年ヴラドの姿が入り込んでくる。明日どうなるかわからない状態の中、シリアスに時を過ごす彼の重厚な姿は、エンゾのマインドを揺るがすに十分だった。そして彼の心は徐々にうずいていく。それは異質なものと出会った衝撃なのか、兄を慕うような気持なのか、それとも恋心なのか。
なにしろ16歳である、思春期である。しかも親の存在はあまりにも大きい。心のよりどころであるヴラドは徴兵されてしまった。彼の心を試練が次々と襲う。それは年を取ると「ああ、あれも人生のひとコマだったのだなあ」と振り返ることができるものなのかもしれないが、16歳ではそこまで達していない。とにかくエンゾは真正面から格闘に格闘を重ねてゆくしかないのだ。その先に彼は何を見たのか、そこをどう感じるかは、鑑賞者の人生経験によってさまざまなものとなるに違いない。性癖に関わらず、自分の人生と照らし合わせながら、じっくり味わうべき一作という印象を受けた。第78回カンヌ国際映画祭 監督週間オープニング作品。原案と脚本は故ローラン・カンテ、監督・脚本・編集はロバン・カンピヨ。
映画『君の見る世界をなぞる』
8月21日(金)より ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館 ほかにて全国順次公開
原案:ローラン・カンテ(『パリ20区、僕たちのクラス』)、
監督:ロバン・カンピヨ(『BPM ビート・パー・ミニット』)
出演:エロワ・ポユ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、エロディ・ブシェーズ、マクシム・スリヴィンスキー ほか
2025年|フランス、ベルギー、イタリア|フランス語、ウクライナ語|カラー|ヨーロピアンビスタ|5.1ch|102分|PG12|原題:ENZO|字幕翻訳:リネハン智子|配給:樂舎
(C)Les Films de Pierre / Lucky Red / Page 114 / Les Films du Fleuve / France 3 Cinema / AMI, Alexandre Mattiussi
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