スマホやSNSの登場しない映画は私にとってもう「時代劇」という感じなのだが、そういう意味ではこの作品、西洋時代劇の傑作である。舞台は1990年夏、東ドイツの田舎町・ハルバーシュタット。「ベルリンの壁」崩壊から8か月を経て、東西ドイツの通貨統合が決まりそうだった時期の話だ。「決まりそう」ということはすなわち「まだ決まっていない」ということで、「決まる前に」「やることをやらなければいけない」。というのも、失業中の夫婦ローベルトとマーレン、彼らの幼なじみであるフォルカーは、忍び込んだ軍の地下坑道で、廃棄されていた数百万マルクもの東ドイツ紙幣を発見、大量に持ち帰っていたからだ。この紙幣が通貨統合によって紙クズになる前に、ちょっと経済的にいい感じになっても悪くはないよね、という話だ。
だから彼らは近隣住民たちを巻き込んで(つまり、自分たちで独占しようとはしない)、西側からやって来るセールスマンたちから家電、食品、生活用品を山ほど買っては西側で転売し、西ドイツマルク札に替えていく。マンガであればフキダシの中に電球が光りそうなグーッド・アイディーアなのだが、それがスムーズにいかず、こちらに「問い」を突き付けてくるようなところも含めて、映画の深みがここにある。しかもこの題材となったエピソードは、実話でもあるのだ。またこの映画からは、1990年当時の、西側(ニアイコール アメリカ)へのぼんやりした憧憬も伝わってくる。監督はナーチャ・ブルンクホルスト、マーレン役は『落下の解剖学』でアカデミー賞候補になったザンドラ・ヒュラー。
映画『ハルバーシュタットの埋蔵金』
9月4日(金)より新宿ピカデリー ほか全国ロードショー
【2024年|ドイツ|ドイツ語|カラー|スコープサイズ|5.1ch|上映時間:115分|原題:ZWEI ZU EINS(2対1)|字幕翻訳:浜本裕樹|字幕監修:吉川美奈子】配給:インターフィルム
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