様々なアジアン・ピープルの人間模様が大阪・キタで花開く。暖かく、切ない158分間。映画『COME & GOカム・アンド・ゴー』公開

 別々の人間物語が、2時間半を超える上映時間のなかで、すれ違ったり、クロスしそうになりながら、実にさりげなくエンディングへ流れ込んでいく。それがリム・カーワイ(マレーシア生まれ、大阪を拠点に活動)監督の作品、『COME & GO カム・アンド・ゴー』だ。

 この作品で描かれる、大阪の梅田北区は、さしずめサラダボウルである。ここを舞台に、さまざまな“アジアの民”(全9か国に及ぶ)が過ごした3日間を映画は綴る。登場するのは中国や台湾や韓国からやってきた観光客、マレーシアのビジネスマン、ネパールの難民、ミャンマー人の留学生、ベトナム人の技能実修生など。彼らが具だとすると、そこにドレッシング的にかけられ、しみこんでいくのは、白骨化した日本人老婦人の死体が発見される事件だ。

 白骨とアジアの若者のどこに接点があるのだろう、と、つい前のめりになってしまうのだが、この映画は刑事や探偵の物語ではないのに、掘り下げが実に丁寧だ。そしてもちろん人種差別的なこと、性差別的なこと、パワハラ、貧富についてもしっかり描かれている。

 個人的には中国の若者と香港の若者がひょんなことから知り合い、居酒屋で語らううちにだんだん打ち解けてゆくシーンをクライマックスのひとつにあげたくなった。クニがもめようとも、ヒトの心を分断することはできないのだ。即興的演出を得意とするカーワイ監督だけに、撮影現場は、大まかなシチュエーションがある以外はほとんどアドリブで進んだともきく。

 出演者はリー・カーション(台湾)、リエン・ビン・ファット(ベトナム)、J・C・チー(マレーシア)、モウサム・グルン(ネパール)、千原せいじ、兎丸愛美、桂雀々(日本)など。個人的には兎丸愛美の存在が深く刻み込まれた。

映画『COME & GOカム・アンド・ゴー』

11月19日より、ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次公開

<出演>
リー・カーション リエン・ ビン・ファット J・C・チー モウサム・グルン ナン・トレイシー  ゴウジー イ・グァンス デイヴィッド・シウ 千原せいじ 渡辺真起子 兎丸愛美 桂雀々 尚玄 望月オーソン

プロデューサー・監督・脚本・編集:リム・カーワイ エグゼクティブプロデューサー:毛利英昭、リム・カーワイ 撮影:古屋幸一 録音・整音:松野泉 美術:藤原達昭 音楽:渡邊崇 衣裳:碓井章訓 メイク:島田幸希、富田允貞 ラインプロデューサー:友長勇介 プロダクションマネージャー:濱本敏治 助監督:神保慶政、鳥井雄人 制作会社:Cinema Drifters LLC 制作協力:KANSAIPRESS、株式会社リンクス、Amanto Films 製作:Cinema Drifters LLC 宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト 宣伝デザイン:阿部宏史、RLF イラスト:西川ちょり 予告編監督:秦岳志 配給:リアリーライクフィルムズ、Cinema Drifters
[2020年製作/158分/日本語・英語・韓国語・中国語・ベトナム語・ミャンマー語・ネパール語など/ビスタサイズ/5.1ch/DCP・Blu-ray]
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