ネルス・クラインやマーズ・ウィリアムスがサントラに参加。クールでディープな2020年代ホラー映画『ダーク・アンド・ウィケッド』がここに

 筆致、いや、映致がクールであればあるほど、じわじわと迫りくる恐怖もひとしおだ。音響、声の出し方、メイク等も含めて、実に怖さが後を引く映画に出会ってしまったという印象を抱く。その作品こそ、『ダーク・アンド・ウィケッド』である。『ストレンジャーズ/戦慄の訪問者』で地位を確立した気鋭ホラー・マスター、ブライアン・ベルティノが監督・脚本・制作を務める。

 主人公となるのは姉と弟、キーマンは神父か。父の病状が悪化したという知らせを聞いた姉弟は、テキサスにある実家(農場)を尋ねる。父は瀕死の状態、だが母の対応は「来るなと言ったじゃないか」的な冷たさだ。いったいどうしたのかといぶかる二人は、この後、あいつぐ謎と恐怖に見舞われることになる。

 寒々とした農場の光景、寡黙そのもののセリフ回し、メリハリに富んだ音響、痛さを感じさせる演出などが一体となって、見る者の温度を下げてゆく。

 はたしてふたりはどんな結末を迎えるのか、そんな気持ちをさらに加速させるのがトム・シュレーダーの音楽だ。ネルス・クライン(ウィルコの一員であると同時に、ジャズの名門ブルーノート・レーベルにも所属)、マーズ・ウィリアムス(シカゴを拠点とする巨匠)らを含むユニットによる響き、締めくくりに流れるアシッド・フォークと、耳を奪われる箇所も数多い。

 シッチェス・カタロニア国際映画祭では最優秀女優賞(マリン・アイルランド)と撮影賞の2部門を受賞した。

映画『ダーク・アンド・ウィケッド』

11月26日より新宿シネマカリテ ほか全国ロードショー

監督・脚本・製作:ブライアン・ベルティノ
音楽:トム・シュレーダー
撮影:トリスタン・ネイビー
編集:ウィリアム・ブーデル、ザカリー・ワイントローブ
出演:マリン・アイルランド、マイケル・アボット・Jr、ザンダー・バークレイ、ジュリー・オリバー・タッチストーン、マイケル・ザグスト
2020年/アメリカ/カラー/95分/シネマスコープ/英語/5.1ch
原題:THE DARK AND THE WICKED/字幕翻訳:本庄由香里/配給:クロックワークス
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