ヘヴィ・メタル・バンド“OUTRAGE”のデビュー35周年と、気鋭役者たちの「メタル愛」が融合した、予想の斜め上をゆく力作群像劇『鋼音色の空の彼方へ』

 食べ物がおいしいので、ぼくは名古屋にいくのがいつも楽しみだ。ライブ会場も、いち音楽ファンとしてジャズ・イン・ラブリーやミスター・ケニーズから名古屋アイドルシアター、エレクトリック・レディランド、ボトムライン、HUCK FINN、得三、VIOなどいろいろ訪れたし、だいたい歩いて回れるのもいい。

 その名古屋を拠点に、世界的な活動を繰り広げるヘヴィ・メタル・バンド“OUTRAGE”のデビュー35周年映画がこの『鋼音色の空の彼方へ』であるが、いわゆる栄光の軌跡を新旧のフッテージや関係者の談話でつなぐドキュメンタリー映画ではない。「OUTRAGEの軌跡を若手俳優が演じる劇映画の制作風景とそれにまつわる日常を、徹底的にメタ視点からのぞきこんだ劇映画」といえばいいだろうか。

 OUTRAGEの映像制作を手掛けている山田貴教が監督なのも、内容にさらなるひねりを加えている。文字通り一筋縄ではいかない作品とはいえ、ストーリー自体はすごくわかりやすくてメリハリがあるので、見終わった後のカタルシスも大きいはずだ。再度ポイントをまとめたい。

※名古屋を拠点に、世界的に活動するヘヴィ・メタル・バンド“OUTRAGE”のデビュー35周年作品である。

※35年間の軌跡をたどるヒストリームービーの主役に、青年4名が選ばれた。メタルにまったく馴染みのない者もおり、当初はあくまで「お仕事のひとつ」という感じ。

※ヒストリームービーのプロデューサーは、筋金入りのメタル・ファン。彼女が熱気たっぷりに放つメタル愛が、結成当時にはまだ誕生してもいなかった青年たちの気持ちをだんだんメタルに、OUTRAGEに前のめりにさせていく。

 このあたりがイントロダクションという感じで、あとは流れに身を任せるまま。「世界の山ちゃん」で宴会したり、登場人物の部屋に「ナト☆カン」のポスターが張ってあったり、「しるこサンド」が出てきたりと、名古屋独自のグル―ヴもたっぷり味わうことができる。OUTRAGE役に扮したのは秋田卓郎、岡陽介、兼平勝、成安藤悟。映画プロデューサー役は近藤久美子、ほか末永桜花(SKE48)が重要な役割を演じ、本物のOUTRAGEもカメオ出演する。原案・伊藤政則。

 5月20日から名古屋で先行公開されて好評の同作品は、6月3日からシネマート新宿/池袋シネマ・ロサ/シネマート心斎橋/川崎チネチッタ等で公開。以降、全国順次公開される。

映画『鋼音色の空の彼方へ』

2022年6月3日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開

【出演】
秋田卓郎 岡陽介 兼平勝成 安藤悟 近藤久美子 山中裕史 末永桜花(SKE48) 三根孝彦 酒井直斗 梨伽 高井泉帆 憲俊 野々田奏 上田定行
<特別出演> 【OUTRAGE】NAOKI 阿部洋介 安井義博 丹下眞也

原案:伊藤政則 プロデューサー:小崎滋之 監督:山田貴教 脚本:成子貴也
THEME SONG [Inspired by the movie] 「Summer rain」「Psycho flowers」/ OUTRAGE
製作:「鋼音色の空の彼方へ」製作委員会 配給:スターキャット 【2022年/103分/ビスタ/ステレオ】
(C)2022「鋼音色の空の彼方へ」製作委員会

https://haganeiro.com/