原田和典
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原田和典

  • 2025年2月15日

どれが嘘でどれが真実? 混乱も含めて物語全体をじっくりと味わうべきインターネットスリラー『コメント部隊』

 嘘と真実がメダルの裏表のようにはっきりと分かれていれば、まだわかりやすいのに、現実は決してそうならない。あるひとにとっての嘘があるひとにとっての真実であり、光の当て方によって、ひとつの物事であっても嘘と真実のパーセンテージはたちまち変わってくる。  主人公のイム・サンジンは実に鼻っ柱の強い社会部記 […]

  • 2025年2月8日

「文字による交流」が強さを失うことはない。平成初期と令和を交差する2種類の恋。『大きな玉ねぎの下で』

 「大きな玉ねぎの下で」は、ロックバンドの爆風スランプが1985年のアルバムの中で発表したバラード。その後「大きな玉ねぎの下で ~はるかなる想い~」というタイトルでシングル・カットされ、今なお高い人気を持つ。私には「40年前の楽曲を、なぜ今映画のタイトルに?」という思いもあったのだが、物語を知ると、 […]

  • 2025年2月7日

驚愕の展開、予想不能の結末。手に汗握る報道サスペンス。『ショウタイムセブン』公開へ

 公開前から話題沸騰の一作といっていいだろう。「ショウタイムセブン」とは、テレビの国民的人気報道番組「ショウタイム7」のこと。かつて折本眞之輔という熱血キャスターが歯に衣着せぬ発言と態度で視聴者を痛快な気分にしていた番組だ。が、ある物事がきっかけで彼はテレビを降板。ラジオ局で活動している。が、ここに […]

  • 2025年2月1日

映画が、映画館が、ある男の人生をこんなにも豊かなものにした。シネマ・ラヴァー必見。『映画を愛する君へ』

 映画に魅入られた人であれば――この映画をそうではない人が観に行くとも思えないが――、思わず「そうそう、そうなんだよ!」と膝を叩きたくなるに違いない。監督・脚本は、1960年フランス生まれのアルノー・デプレシャン。ここでは、彼の溢れんばかりの映画愛が、ポール・デダリュスというキャラクターに投影されて […]

  • 2025年1月28日

一枚のLPレコード再評価が巻き起こした実話をもとにした、奥の深い一作。『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』

 地方都市でごく少数プレスされたレコードが、その数十年後に(高名なミュージシャン、評論家、DJなどによって)突然再評価されて広く話題となり、全国区で再発されて、それがまた新たなファンを獲得する源となって、そのローカル・ミュージシャン本人も活動を活発化させてゆく――特に“レア・グルーヴ”ということがら […]

  • 2025年1月21日

人間の運命をつかさどる三女神「Moira」をモチーフに、異なる3つの世界を描くオムニバス作品『Moirai』

 3話で構成されたオムニバス作品。タイトルの『Moirai』とは、人間の運命をつかさどるギリシャ神話の三女神の総称であるという。ここでは二宮健、山西竜矢、荒木伸二の各監督が、実に想像力に訴える物語を紡いでいる。  最初に登場するのは二宮監督の『嗚呼、かくも牧場は緑なりけり』。私は展開に意表を突かれた […]

  • 2025年1月18日

人気バンド“チョーキューメイ”の麗がヒロイン役。映画作りに情熱を燃やす高校生を描く。『Retake リテイク』公開へ

 「映画づくりの過程」を見てゆく映画。といってもドキュメンタリーではない。楽曲「貴方の恋人になりたい」のTikTok再生回数が10億回を超えるバンド“チョーキューメイ”の麗、さらに武藤優汰、タカノアレイナ、大原奈子、千葉龍青が高校生に扮したドラマだ。監督・脚本・撮影・編集は中野晃太。麗は高校時代に中 […]

  • 2025年1月17日

人間が人間を愛すること、それを誰に責められよう。異文化とジェンダーの狭間で描かれる、耽美的な一作、『今日の海が何色でも』

 「恋愛と宗教」というテーマに正面から、だが重々しさを極力排しつつ向かい合った作品との印象を受けた。物語はソンクラーという土地で展開される。ここはタイとマレーシアの国境にある。つまり仏教とイスラム教の境でもある。かつては美しい砂浜があったそうだが、今は人工の岩が護岸用に置かれている。とはいえ、地元の […]

  • 2025年1月17日

香港映画として歴代最高の動員を記録。巨大スケールで捉えられた「命を懸けた最後の戦い」。『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』

 今はなき「九龍城砦」の画像を検索してから、この映画を観ることをお勧めする。追加建築を重ねまくってあまりにも独自な姿になっている感じも含め(レゴブロックなら、とっくに倒壊していたに違いない)、まさにその「九龍城砦」そっくりそのままだから(約10億円が投じられたとか)、私など、それがスクリーンの中で動 […]

  • 2025年1月17日

「このチャンスを逃せば、こんなものは二度と観られないかも」と評された、あまりにも独特なミュージカル、『ディックス!! ザ・ミュージカル』

 あの『グレイテスト・ショーマン』や『ラ・ラ・ランド』のスタッフが関わっているミュージカル映画、とはいっても、誰かと一緒に観に行く場合は要注意かもしれない。下ネタ満載の作品だからだ。そもそも「ディックス!!」の「ディック」とは、往年の日本の名歌手ディック・ミネの芸名の由来になったという「ディック」、 […]