ギリアム監督の古典的一作が、スコセッシ、ルーカス等の出資で4Kレストア。『ジャバーウォッキー 4Kレストア版』、7月1日公開

 テリー・ギリアム、初の単独監督作『ジャバーウォッキー』が、公開から45年を経て4Kレストア版で蘇った。

 “ジャバーウォッキー”とは、正体不明の怪獣のこと。ルイス・キャロル作の児童文学『鏡の国のアリス』のナンセンス詩にも出てくる名前なので、おそらく西洋では怪獣に対する最もポピュラーな呼び名なのだろうと想像できる。舞台は中世のヨーロッパ。決して恵まれた境遇にいるとはいえない青年が、貧富の差がやたらすごいブルーノ王国への潜入に成功してからの日々と活躍が描かれる。

 「中世のヨーロッパ」といっても、コスチューム(鎧がすごい)や、中で繰り広げられている競技などは相当な確率でスタッフの草案であろう。これがなんとも面白い。青年が奮闘すればするほど(我々はいつしか彼に感情移入することになるだろう)、王と娘の頭の中に拡がるお花畑もまた、憎々しいほどに輝きを増して見えてくる。

 こんな王国にいたら俺の人生めちゃくちゃだ、とばかりに、青年が脱出を企てる頃から、物語はさらに加速する。王国のクレイジネスに巻き込まれることで、自分が心から求めていたものが何かがわかったのだ。ネガティヴに動こうとするが、やることなすこと、彼の考えとは裏腹に、お偉方を喜ばせてしまう。「これは、わらしべ長者のヨーロッパ版か」とも一瞬思ったが、青年本人の気持ちはちっと晴れない。王子にならなくてもいい、領土もいらない、そのかわり人の気持ちがわかる恋人と、小さくてもいいから安定した環境で暮らしたい……そんな彼の願いは果たして叶うのか、ハラハラしながら見てほしい。

 4Kレストアはマーティン・スコセッシとジョージ・ルーカスの出資により、行われたときく。彼らをうならせたハードボイルドでユーモラスな作品の復活(日本では1980年以来の上映)を心から喜びたい。7月1日から新宿シネマートほかで公開。

映画『ジャバーウォッキー 4Kレストア版』

7月1日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開

監督:テリー・ギリアム 製作総指揮:ジョン・ゴールドストーン 脚本:チャールズ・アルヴァーソン、テリー・ギリアム
出演:マイケル・ペイリン、ハリー・H・コルベット、ジョン・ル・メスリエール、ウォーレン・ミッチェル、マックス・ウォール、ロドニー・ビューズ、ジョン・バード、バーナード・ブレスロウ、テリー・ギリアム、ニール・イネス、テリー・ジョーンズ
1977 年|イギリス|106分|アメリカンビスタ|5.1ch|DCP|原題:Jabberwocky|字幕:落合寿和     
配給:アンプラグド 提供:是空
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