「のん」が主演を務める、さかなクンの半生をベースにした話題作がついに公開

 さかなクンの半生をベースにした作品『さかなのこ』が9月1日(木)から全国公開される。主人公の“ミー坊”は、「のん」が演じている。とはいえ彼女は学ランこそ着ていても、この映画のために髪の毛を短くしたわけでもないし、無理に低めの声でしゃべっているわけでもない。通常の「のん」が、なんの違和感もなくスルッと「さかなクン」に同化している感じだ。

 好きこそものの上手なれ、という言葉があるけれど、それがどんどん研ぎ澄まされていくと、クレイジーと言われる領域に入り、さらにめぐりめぐって、社会のためになる。いわゆるノブレス・オブリージュというやつである。同じ考えを持っている者が正しく、異なる考えの者は排除されるのが子供社会だというのが筆者の実感なのだが、その点、熱中の対象がスポーツでもアニメでもゲームでも芸能人でもなかった“ミー坊”は、学級という村の中でのコミュニケーションに、かなり苦労したのではないかと思う。

 が、物語は実に前向きであたたかい。今を生きているマイノリティの少年少女たちの背中をそっと押すこともこの映画の主眼なのではないかと、ひとり考えている。名場面と言いたくなるところも多い。筆者は北海道出身ということもあるのか、「ししゃも」のシーンにとりわけ共感を覚えた。

 サウンドトラックは主にパスカルズが担当、さかなクンがバス・クラリネットで参加しているところにも注目したい。あまりにも魚類の知識が凄すぎるために霞みがちだが、彼はリード楽器奏者としても相当な才能を持っているようなのだ(そうでなければ、すぐに音が裏返るバスクラをこなせるわけがない)。次はさかなクンの、ミシェル・ポルタルばりの吹きまくりを聴いてみたい。そう思わずにいられなかった。また、さかなクン自身も、劇中に本人の姿で登場している。

映画『さかなのこ』

9月1日(木)よりTOHOシネマズ 日比谷 ほかにて全国ロードショー

<キャスト>
のん 柳楽優弥 夏帆 磯村勇斗 岡山天音 さかなクン 三宅弘城 井川遥

<スタッフ>
原作:さかなクン「さかなクンの一魚一会 ?まいにち夢中な人生!?」(講談社刊)
監督・脚本:沖田修一
脚本:前田司郎
主題歌:CHAI「夢のはなし」
音楽:パスカルズ
製作:『さかなのこ』製作委員会
制作・配給:東京テアトル
(C)2022「さかなのこ」製作委員会

公式サイト