命の尊さを、いま改めて訴える。「白血病と骨髄移植」や「ドナー登録」への理解を深める一作『いちばん逢いたいひと』

 私は、お世話になったレコード・プロデューサー、音楽評論家、ミュージシャンの3人を白血病で失っている。いかにすさまじい病であるかも知識として得ているつもりだ。それだけに、乗り越えた人には畏怖の念を持つ。そしてそれは、強運に対するリスペクトでもある。

 この作品は実話を基に制作されたという。堀ともこプロデューサーには、10年ほど前に愛娘が白血病になったという経験がある。愛娘は幸いにして健康を取り戻したが、そこには「ドナー」の存在が不可欠だった。堀プロデューサーは、「白血病と骨髄移植」や「ドナー登録」について理解を深めてほしいと、この作品を企画した。

 物語の前半は幼児たちが中心となって展開する。女の子(愛娘をモデルにしたのであろう)と男の子の交流、その親どうしのやりとりが、実にわかりやすく描かれる。「白血病のインパクト」を知らない者に、あえてやさしく解きほぐして紹介するような展開に、「理解を深めてほしい」という気持ちが現れているように感じられた。

 後半は、成長し、すっかり健康になって「一人旅に出る」という夢を叶えるに至った彼女と、ドナーを提供した男性による「見えない絆」が見ものだ。出演は倉野尾成美、高島礼子、崔哲浩、中村玉緒ほか。監督・脚本を担当した丈は、役者としても登場する。

映画『いちばん逢いたいひと』

2月24日(金)よりシネ・リーブル池袋ほか全国順次公開

<キャスト>
倉野尾成美(AKB48)
三浦浩一 不破万作 田中真弓 大森ヒロシ 丈 崔哲浩 中村玉緒(特別出演) 高島礼子

<スタッフ>
監督・脚本:丈
配給:渋谷プロダクション
2022/ビスタ/5.1ch/DCP/106min
(C)TT Global

公式サイト
https://www.ichi-ai.com/