うだるような酷暑が続くなか、絶好のタイミングでの日本上映といえるだろう。じわじわと「恐怖」が「涼」を運んでくれるからだ。

『パラドクス』で注目されたメキシコのアイザック・エスバン監督が手掛けたスリラー。13歳の少女「ナラ」が感じた諸々が、彼女の視点から綴られていく。ある日、彼女の妹が不可思議な病気にかかってしまった。療養のためでもあるのだろう、一家は母の故郷である小さい村に移る。家族を待っていたのは、なんともミステリアスな祖母「ホセファ」と、螺旋階段が特徴的な広い家。周りでは「謎の死」が起こり、妹の調子はちっともよくならない。「ナラ」には祖母が不気味に感じられて仕方がなかった。そして「私のおばあちゃんは、ひょっとして人間ではないのでは?」との考えに至る。
この祖母「ホセファ」が異様なまでにすごい。しわのひとつひとつ、しゃがれ気味の声、カクカクした動きなどが静かな迫力を醸し出す。「ナラ」がとまどい、あたふたするほど、「ホセファ」の冷徹ぶりが引き立つという寸法だ。それにしても「ナラ」と「ホセファ」は孫と祖母という関係だが……よく、「孫は子供以上にもかわいい」というではないか。ひょっとしたら「ホセファ」は「ナラ」にゆがんだ愛情を注ぎ、それが「ナラ」の恐怖を倍加させているのか? あえて結論は急がず、皆さまにぜひ見て、考えていただけたらと思った。
「ナラ」は10歳の頃から活動するパオラ・ミゲル、「ホセファ」は1960年代から第一線に立つオフェリア・メディーナが扮する。
映画『イビルアイ』
2023年7月28日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
監督・脚本:アイザック・エスバン
出演:オフェリア・メディーナ、パオラ・ミゲル、サマンサ・カスティージョ
2022年/メキシコ/スペイン語5.1ch/100分/英題:Evil Eye/字幕翻訳:浦田貴美枝 配給:AMGエンタテインメント
(C) FILM TANK, CINEPOLIS, CINEMA MAQUINA All Rights Reserved.