映画『緑のざわめき』の完成披露舞台挨拶が開催。「松井玲奈」と「草川直弥」が異母妹にストーキングされる主人公とモテ男役について語る

きっと全部、自分に折り合いをつけるための旅
生き別れた異母姉妹が手を取り合って、自らの力で居場所を切り開いていく姿を描く

 第18回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門に正式出品された、福岡、佐賀を舞台に、3人の異母姉妹が織りなす物語を描いた『緑のざわめき』。本作は、新鋭・夏都愛未監督(『浜辺のゲーム』)が、大江健三郎や中上健次の文學にインスパイアされ、葉脈と血の繋がり、ファミリーツリー、性と聖の繋がりをテーマに描くオリジナル作品。3人の異母姉妹に、元カレ、女子会メンバーらが交わり、物語は思いもよらない方向へと進んでいく……。

 8月6日に開催される完成披露舞台挨拶に、女優を辞め、東京から生まれ故郷のある九州に移住しようと福岡にやってくる主人公・響子役の松井玲奈、及び響子の元カレ・宗太郎役のダンス&ボーカルユニット「ONE N’ ONLY」のRAP&ダンサーの草川直弥が登壇。福岡・佐賀での撮影の思い出、会ったことのない異母妹にストーキングされる響子役と、『忌怪島/きかいじま』での熱演も記憶に新しい川添野愛演じる絵里を夢中にさせる宗太郎役についてなど撮影の裏話を伺いました。
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 本作は、主人公の響子が、女優を辞め、東京から生まれ故郷のある九州に移住しようと福岡にやってくるところから始まる。ご自身との共通点を聞かれた松井は、「共通点はあまり見つからないと思ったので、同じところではなく、生い立ちや抱えている悩みに寄り添って少しでも理解して、自分なりに表現するということを意識しました」と話した。

 草川演じる宗太郎は、福岡の本屋で働いているチャラ男。草川ご自身との共通点を聞かれると、「宗ちゃんはチャラいんですけれど、その中にも温かみのある優しいところは、僕も共感できました。『こういう人いるな』というのを想像でやらせていただきました。愛嬌もあって嫌いになれないと感じてもらえたらと思って演じさせてもらいました」と実は深いキャラクターについて話した。

 草川は、響子の元彼・宗太郎役。劇中では、二人がどれくらい付き合っていたのか、どうして別れたのかなどは明かされていない。松井は、「ドロドロの別れ方でなくて、いい別れ方をしたからこそ、この二人の関係が再会しても続いたんだなと感じていました。監督が、大学生時代に二人は付き合ってみたいなことを話した気がします。」と回想した。草川は、「宗太郎は、いろんな女性の方と付き合ったりしたんですけれど、響子に対しては特別な感情があるのではないかと思います。」と自身の考えを説明した。

 劇中、岡崎紗絵演じる菜穂子が、松井演じる響子のストーカーということが段々とわかってくる。松井はドラマ「ニーチェ先生」ではストーカーの要素を持ち合わせた役を演じていた。今回ストーカーされる役を演じて、「響子と同じで、誰かにつけられているとは感じていなかったので、だからこそあの二人が出会った時に、驚きと受け入れ難い気持ちが現れたのかなと思いました。」と、重要なシーンに触れ、完成した映画を観た際も、「前半部分の菜穂子の響子に対する執着というような強い思いというのをすごく感じました。」と話した。

 宗太郎は、いきなり岡崎演じるお客さんの菜穂子に告白されるシーンがある。草川自身はそういう経験はあるか聞かれ、「いきなり告白されるような経験はないんですけれど、ファンの方が『好きです』と言ってくださったりするのはありがたいと思います。引き続き、たくさん言ってください!」と可愛くアピールして、ファンの方達から拍手が起きた。

 草川演じる宗太郎は、マッチングアプリをやっているという設定で、響子と宗太郎はマッチングアプリについて意見が分かれる。草川は、「『マッチングアプリで結婚しました』とか『付き合いました』とか、愛はいろいろな形があると思うので、全然アリだなと思います。お互い愛し合っているのであれば、どんな形でもいいのかなと思います。」と持論を展開。松井は、「『それぞれご自由にどうぞ』みたいな気持ちなんですけれど、響子自身が自分の父親がいろんな人と経験を持っていたということもあり、そこから生じる物事が見えているからこそ、彼にはそういうふうになってほしくないし、これ以上誰かが傷つく状況が起こってほしくないと思いながら釘を刺したんじゃないかなと思いながら演じました。」と背景を説明した。

 宗太郎は、アプリで出会った川添野愛演じる絵里を夢中にさせる。「観ている方が、『こいつクズだな、チャラいな』と思ってもらえるようにと、演じさせていただきました」と当時を振り返った。

 本作は佐賀と福岡で撮影された。松井は、「すごく緑が豊かなところだなと思いましたし、撮影のない時間は映画の中にも出てきた佐賀にある図書館でずっと過ごしていたので、こんな素敵な場所がある佐賀にもっと長くいたいなと思いながら過ごしていました。」と述懐。「自分でも小説を書いて本を出させていただいているんですけれど、自分の本が置かれていたので、ここの図書館を利用している方にも読んでもらえてるんだなと思って嬉しかったですし、佐賀の方にもこの作品を観てもらえたら嬉しいなと思っていました」と話した。

 草川が「福岡はライブで行ったことはあるんですけれど、佐賀は初めましてでした。嬉野の方で撮影があったんですけれど、空き時間に温泉を調べてサウナに行きました。朝方に行ったので周りはおじいちゃんが多くて、おじいちゃんと会話して、温かいところだなという印象です。」と撮影時のエピソードを話すと、松井は、「本編で二人が話しているサウナの話はアドリブなんです」と暴露。「監督に何か喋ってくださいと言われたので、そのまま使われています」と裏話を披露した。

 松井は佐賀弁に挑戦。「私は愛知県の豊橋市出身で、三河弁を喋ってたんですけれど、佐賀弁は言葉の雰囲気が似ていて苦戦することはそんなになかったです。自然すぎて、自分で佐賀弁を話したことを忘れていたんです。『松井玲奈が佐賀弁に挑戦』という記事が出た時に、喋ってなかったけどなと思って、予告編を見たら喋っていました。方言ってイントネーションが難しいのに、すんなり喋れてたからこそ、佐賀弁を喋ったことを忘れていました。」と滅多にない経験について話した。

 撮影中のエピソードについては、松井は、「完成したものを観た時に倉島颯良さん演じる杏奈ちゃんと私演じる響子が橋の上で出会う場面に遠くで映っている民家にめちゃめちゃでかいクマが映ってたんですよ。ぜひもう一度観てクマを確認してください。」と話して観客の笑いを誘った。

 草川は、「この撮影の前の期間に金髪にしていて、ブリーチしすぎて髪が傷んでいたんです。前髪がちぎれてしまって。それが、都会に染まりたいけれど染まれないという男の子感が出ていて、逆に良かったなと思います。短すぎてセットができないくらいだったので、メイクさんに感謝したいです。」と感謝を述べた。

 本作は9月1日公開。今日いらっしゃったお客さんが2回目に観る場合、注目してほしい部分を聞かれた松井は、「一度目は三人の関係性がどういうものなのか、どう繋がっていくかに注目しながら観ていただいたと思うんですけれど、2回目を観ていただくと、最初から3人の関係性をわかった上で観ることができるので、細かい表情の機微に込められていた本当の意味合いを、わかるようになってくるのではないかと思います。ぜひ全員の細かい表情に注目していただければと思います。」と話した。

 草川は、「宗太郎は、第一印象では、チャラいなとか思う方もいるかもしれないですけれど、その中にもどこか憎めない優しさだとか、この時響子に対してこう思っていたのかなというのを観ている方それぞれが感じ取っていただければ嬉しいです。(3姉妹プラス宗太郎のそれぞれの視点で)4回観てください」とアピールした。

 最後のメッセージとして草川は、「この作品に入る前にキャストの方に女性が多かったのでどうなるかなと思っていたんですけれど、皆さん温かく迎えてくれて僕なりの宗太郎を演じられたので、9月1日からたくさん劇場に足を運んでくれたら嬉しいです」、松井は、「この作品は言葉は多くないけれど、人と人との繋がりを表していると思います。この作品の中に出てくる”葉脈”のように、人と人はいろいろな繋がりをしていると思うんです。自分にとって大切な人や大切に思う場所を胸に抱いて帰っていただければ嬉しいなと思います。」と想いを語った。

映画『緑のざわめき』

9月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次公開

■あらすじ
過去の痴漢被害のトラウマを抱えて生きてきた響子(松井玲奈)は、病を機に女優を辞め、東京から生まれ故郷のある九州に移住しようと福岡にやってきて、元カレの宗太郎(草川直弥)と再会する。

異母姉の響子と繋がりたいと、彼女をストーカーする菜穂子(岡崎紗絵)は、異母姉妹ということは隠し、響子と知り合いに。

施設に預けられていて、8年前から佐賀県嬉野で叔母の芙美子(黒沢あすか)と暮らす高校3年生の杏奈(倉島颯良)は、自分宛の手紙を勝手に読んだ叔母に不信感を募らせていた。「まずは話してみませんか?」という支援センターの広告を見て、身元もわからない菜穂子からの電話に、悩みを打ち明け始める。同じ頃、杏奈に思いを寄せる透(林裕太)は、杏奈とうまくいくよう、集落の長老・コガ爺(カトウシンスケ)に相談しに行っていた…

就職活動がうまくいかない中、 地元・嬉野に戻り、親友の保奈美(松林うらら)に就職の相談をする響子は、ひょんなことから自分と杏奈が異母姉妹ということを知ってしまう。菜穂子は、宗太郎に恋焦がれる絵里(川添野愛)等いつもの女子会メンバーとの旅先を嬉野に決め…

松井玲奈 岡崎紗絵 倉島颯良 草川直弥(ONE N’ ONLY) 川添野愛 松林うらら 林裕太 カトウシンスケ 黒沢あすか

監督・脚本:夏都愛未 プロデューサー:杉山晴香 / 江守徹 撮影:村松良 照明:加藤大輝 音楽:渡辺雄司 配給:S・D・P 製作:「緑のざわめき」製作委員会
2023年/日本/カラー/4:3/Stereo/115分
(C)Saga Saga Film Partners
文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業

公式サイト
https://midorinozawameki.com/