あの運転手が、ぼくの父親の命を奪ったのか……。ベテラン名優と少年俳優のコンビネーションが光る力作『白日青春―生きてこそ―』

 わかりやすいストーリー、キメ細かな描写、うならせるエンディング(「The Sunny Side of the Street」という英語タイトルに、なるほどと思った)が快い。観た後に、胸が奥のほうからだんだん暖まってゆくのを感じるだろう。

 パキスタンから香港へやってきた難民の少年と、香港に密入境したタクシー運転手の物語だ。少年一家はカナダに移住することを心に描いていたが、父が交通事故で他界し、その計画は幻に。少年はギャングに入ってその日ぐらしの生活を送っている。運転手には警察官の息子がいるものの、どうにも相性が良くない。

 何のめぐりあわせか、この少年と運転手が、出会い、心を通わせていく。が、そうなると、しだいに相手のことがつまびらかになってくる。ぼくから父を奪ったのはこの運転手なのだ……。以降の展開が実に丁寧に描かれる。加害者と被害者。世代も違えば、母国も違う。ただ、今は、共に香港にいて、同じ空間にいて、言葉を交わしている。その先にあるのは恨みなのか、復讐なのか、それとも赦しなのか。私はハラハラしながら観て、結果として、新世代ラウ・コックルイ監督(本作が長編第1作であるという)の術中にはまった。

 運転手役はベテランのアンソニー・ウォン、少年役のサハル・ザマンはこれが映画初出演、2023年の第41回香港電影金像奨で最優秀新人俳優賞を得た。

映画『白日青春―生きてこそ―』

1月26日よりシネマカリテ ほか全国順次公開

監督・脚本:ラウ・コックルイ 撮影監督:リョン・ミンカイ プロデューサー:ヴィーノッド・セクハー ソイ・チェン ウィニー・ツァン ピーター・ヤム 
出演:アンソニー・ウォン サハル・ザマン エンディ・チョウ インダージート・シン キランジート・ギル
2022年/香港・シンガポール/広東語・ウルドゥ語/カラー/DCP/シネマスコープ/ステレオ/111分
原題:白日青春/英題:The Sunny Side of the Street/日本語字幕:橋本裕充/字幕協力:大阪アジアン映画祭/PG12/配給:武蔵野エンタテインメント株式会社
PETRA Films Pte Ltd (C) 2022

公式サイト
https://hs-ikite-movie.musashino-k.jp/