ロマンティックな童話とホラーは相性がいいなあ。音楽で言えばクラシックとヘヴィーメタルがしっくりいくようなものか。

第75回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品、第43回ブリュッセルファンタスティック国際映画祭シルバーレイブン受賞など、20もの映画祭で正式出品されたという一作。第41回サンダンス映画祭でプレミア上映されたときは、退出者が続出したとも伝えられる。
そんなにヤバいのか、グロテスクなのかと思いつつ見たが、おお、これは見る者に「生々しい痛み」を感じさせるに十分な一作だ。人間は物心がつく間にだいたい痛みをいくつか体で覚える。転んでひざをすりむいたり、紙をさわっているときに指を切ってしまったり、とんでもない歯痛に襲われたり、いろいろな経験を経て、あるていど耐性がつくものだと思うが、この映画で描かれているシーンには、「耐性では処理しようがないほどの痛み」を感じさせる。血が、内容物が、どっと噴き出るごとに、見る者は自分が体験した「ハードな痛みを伴う体験」「青ざめるほどの出血体験」を思い出すことだろう。
ストーリーのベースとなっているのは、誰もが知るであろうおとぎ話「シンデレラ」。花嫁を探している王子と、その候補外と目されていた女性が、彼女の周りのさまざまなイヤミや妨害を超えて結ばれる……というストーリーだったと認識しているが、この映画はより込み入っている。主役のエルヴィラは母・レべッカの再婚のために、スウェランディア王国にやってきた。エルヴィラの夢は王子の花嫁になることだが、義理の姉妹のアグネスのほうが家柄もルックスも良い。どう考えてもアグネスのほうが「花嫁」への距離が近い感じだ。だが何百年も前の話、本人の意志では結婚など決められない。
ある日、アグネスの父が死去。そこで俄然、力を持ち始めたのがレベッカだった。彼女の野望は、エルヴィラを王女にすること。ゆえにアグネスを貶めまくり、エルヴィラを「美しい外見」にするためには手段を選ばない。繰り返すが今から何百年も昔の話であるから、美容整形という概念も定着していなかったのではないか。もう命がけの人体実験である。が、痛みに耐えれば「王子の嫁になるかも率」がアップしていくのだ。王子に見初められたら最上級の生活ができるはず。だから母親も必死だ。
監督のエミリア・ブリックフェルトはこれが長編デビュー作。主人公のエルヴィラにはリア・マイレンが扮する。
映画『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』
1月16日(金)より 新宿ピカデリー ほか全国公開
監督・脚本:エミリア・ブリックフェルト
出演:リア・マイレン、アーネ・ダール・トルプ、テア・ソフィー・ロック・ネス、フロー・ファゲーリ、イサーク・カムロート
2025年/ノルウェー、デンマーク、ポーランド、スウェーデン/ビスタサイズ/DCP/109分/カラー/ノルウェー語/5.1ch/映倫R15+/日本語字幕翻訳:原田りえ/原題『Den stygge stes?steren』 英題『The Ugly Stepsister』
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム 提供:ニューセレクト
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