自らを「ガマフヤー」(洞窟を掘る人)と呼ぶ具志堅隆松をフィーチャーした、示唆に富む一作『骨を掘る男』

 この映画には3つのファクターがあると感じられた。ひとつは、具志堅隆松という、40年以上にわたって沖縄戦の戦没者の遺骨をボランティアで蒐集している男性の存在。もうひとつは、沖縄戦の犠牲になった大叔母の生きた痕跡を探す本作の監督・撮影・編集の奥間勝也。さらにもうひとつは、戦争の犠牲になった者(それは日本人に限らない)の骨を含んだ土砂が辺野古新基地のための埋め立てに使われようとしているという現状。それらが互いに作用して、この映画を進行させる。

 具志堅隆松については、「沖縄タイムス」のホームページにいくつもの関連記事が掲載されているので、そちらをごらんいただきたいが、彼はまた、「語り部」でもある。日本が今のところ自国をも舞台にした最後の戦争を行ったのは1945年、つまり79年も前のことであり、リアルタイムでそれを体験しているひとは年々数少なくなっている。惨事を風化させないため、犠牲者の「生きていた日々」をとどめるために、次世代がとるひとつのヴィジョンを、私は具志堅から得た思いがする(「掘る」ということだけではなく)。あれほどすさまじい沖縄戦だもの、沖縄の役人だって親族の誰かを戦争で失っているだろうに……。

映画『骨を掘る男』

6月15日(土)より[東京]ポレポレ東中野、[大阪]第七藝術劇場、[京都]京都シネマ、6月22日(土)より[沖縄]桜坂劇場ほか全国順次公開

撮影・編集・監督:奥間勝也
整音:川上拓也
カラリスト:田巻源太
音楽:吉濱翔
共同製作:ムーリンプロダクション、Dynamo Production
製作:カムトト
配給:東風
2024 | 日本・フランス | 115分 | 5.1ch | DCP |ドキュメンタリー
(C)Okuma Katsuya, Moolin Production, Dynamo Production

公式サイト
https://closetothebone.jp/