東日本大震災10年メモリアル短編映画。世界の映画祭で絶賛された一作が、ついに日本で一般公開。『最後の乗客』

 55分の物語だが、内容は濃い。父に対する娘のやや反抗的な態度に往時の自分を思い重ねるひともいるだろうし、それをも乗り越えた父と娘の愛情の深さに感じ入るひともいるだろうし、「震災」から今日までの日々に思いをはせるひともいるだろうし、「震災当時」にタイムスリップしたような気分になるひともいるだろうし、心のこもった放送がいかにひとの心に潤いを与えるかを改めて知るひともいるだろうし……いかように解釈できるような深さがある。そして私はなんともいえない、哀しい感情も受けた。「震災さえなかったら」と思う気持ちを止められなかった。

 自主制作のクラウドファンディングから始まり、世界の映画祭で絶賛されたという作品が、GAGAの配給で劇場公開となった。もともとは、制作・原作・監督・編集の堀江貴が、震災から10年がたつ故郷の宮城県仙台市への想いを1本の映画に収めようということから始まった一作であるという。かねがね噂されていた“深夜、人気のない歩道に立ちずさむ女”に実際に出会い、乗せたタクシードライバーを中心に描きつつ物語がスタートしていくが、その先は多彩で、良質のミステリーのようなコクもある。キーワードは「浜町」だろうか。見逃せない一作だ。タクシードライバー役を『侍タイムスリッパ―』の冨家ノリマサ、その娘を宮城県仙台市出身で元AKB48 の岩田華怜が演じる。

映画『最後の乗客』

10月11日より全国順次公開

キャスト:岩田華怜 冨家ノリマサ 長尾純子 畠山心 谷田真吾 ほか
監督:堀江貴 撮影:佐々木靖之 音楽:徳家“Toya”敦 企画・制作:マーマレード・ピクチャーズ 配給:GAGA
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公式サイト
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