映画が、映画館が、ある男の人生をこんなにも豊かなものにした。シネマ・ラヴァー必見。『映画を愛する君へ』

 映画に魅入られた人であれば――この映画をそうではない人が観に行くとも思えないが――、思わず「そうそう、そうなんだよ!」と膝を叩きたくなるに違いない。監督・脚本は、1960年フランス生まれのアルノー・デプレシャン。ここでは、彼の溢れんばかりの映画愛が、ポール・デダリュスというキャラクターに投影されている。6歳の時に初めて祖母に連れられて映画館に足を踏み入れたこと、あまりの映画観たさに年齢を偽って中に入ったこと、大学で映画について学んだこと、評論家として活動をし始めたもののやっぱり自分で撮りたいと監督になったこと、そのきっかけには古典『大人は判ってくれない』を映画館で観たこと、などなど。

 「ポールと映画の関わり」を描きつつも、リュミエール兄弟以来の映画史も知ることができるし、数々の名画の場面が挿入されているのも実に豪華。いっぽうで映画好きの庶民(だと思う)の話も挿入されていたり、なんというのだろう、この映画では、映画を愛する人であればみな、対等だ。と同時に、映画館での鑑賞体験がいかに大切なものであるか、ということもやんわりと、しかししっかりと伝える。配信でしか映画を観たことがないというひとが、もしあなたのまわりにいたら、「こういう楽しみ方もあるんだよ」と、誘い出してみてはいかがだろうか。

映画『映画を愛する君へ』

1月31日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

監督・脚本:アルノー・デプレシャン 脚本:ファニー・ブルディーノ 製作:シャルル・ジリベール 共同製作:オリヴィエ・ペール 音楽:グレゴワール・エツェル 撮影:ノエ・バック 衣裳デザイン:ジュディット・ドゥ・リュズ
出演:ルイ・バーマン クレマン・エルヴュー=レジェ フランソワーズ・ルブラン ミロ・マシャド・グラネール サム・シェムール ミシャ・レスコー ショシャナ・フェルマン ケント・ジョーンズ サリフ・シセ マチュー・アマルリック
2024年/88分/フランス/原題:Spectateurs! 英題:Filmlovers!/カラー/5.1ch/2.35:1/日本語字幕:福原龍一
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ 配給:アンプラグド
(C) 2024 CG Cinema / Scala Films / Arte France Cinema / Hill Valle

公式サイト
https://unpfilm.com/filmlovers/