ニューヨーク・タイムズが「現代アメリカのサブカルチャーを風刺した変幻自在の作品」と評した話題作が日本上陸、『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』

 虚実ないまぜ、リアルとファンタジーの間を揺れ動く、なんとも不可思議な作品だ。最初の数分、「どう見ればいいのだろうか?」と心の中がゆらゆらしたことを正直に申し上げておきたい。が、自分の鑑賞上のスタンスなどいったん忘れて、映像の流れに身を任せていくと、これが面白い。と同時に、これはとんでもない社会派作品かもしれない、とも感じられてくる。

 監督を務めるショーン・プライス・ウィリアムズは、監督としてはこれが最初の作品であるらしいが、数多くの長編・短編映画に関わり、BLACKPINK ロゼなどのミュージックビデオも撮ってきたというキャリアの持ち主。満を持して、これまで培ったノウハウを導入しつつ、作品を仕上げていったであろうことが容易に想像できる。ストーリーを提示するという行為に関しても、どこかで距離を置いているというか、なんというのだろう、「物語そのものをガッチリ見せていく」というよりは、「この不可思議な世界を見る者に案内するためのモチーフのひとつ」として、物語を扱っている感じだ。

 主人公の高校生・リリアンは、修学旅行でワシントンDCを訪れている。まず、この「ワシントンDC」という場所がホワイトハウスのあるアメリカの首都であることを心にとめてもらいたい。学生生活がだるくてうざいので、やがて彼女は刺激を求めてバーに行くのだが、ここで銃乱射事件に出会ってしまう。幸いにも命に別条はなかったのだが、このときに謎の青年と知り合い、彼に案内されるがままに「地下通路へとつながる鏡の扉」へ。その扉を開けて向こうにいくか、立ち止まって引き返すかはリリアンの意志しだいなのだが……。

 出演はタリア・ライダー、サイモン・レックス、ジェイコブ・エロルディ、アール・ケイヴ(ニック・ケイヴの息子)など。脚本はニック・ピンカートン。

映画『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』

3月14日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開

監督・撮影:ショーン・プライス・ウィリアムズ
脚本:ニック・ピンカートン
製作:クレイグ・ブッタ、アレックス・ココ、アレックス・ロス・ペリー
編集:ステファン・グレヴィッツ
プロダクション・デザイン:マデリン・サドウスキー
オリジナル音楽:ポール・グリムスタッド
サウンドデザイン:ディーン・ハーリー
2023年|アメリカ映画|英語|104分|16:9 ビスタ|5.1ch|原題:The Sweet East|R-15+ |提供:ニューセレクト|配給:アルバトロス・フィルム
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