「映画を通して第一次産業の素晴らしさや豊かさを伝えていきたい」というコンセプトで、2012年に始まった『種まく旅人』シリーズ。その5年ぶりとなる通算第5弾は、兵庫県淡路島が舞台。中心となるのは、淡路島で作られる日本酒と兵庫県を代表的産地とする酒米・山田錦だ。

淡路島の老舗酒蔵に、農林水産省官僚がやってきたことから物語が始まる。職人にとっては当初「よそ者」であろうが、この官僚は日本酒が大好きで、リスペクトもしていたし、コミュニケーション能力にもすぐれていた。やがて官僚は、映画を観ているこちらの「見たいところ」を事前に知っていたかのように、いろんな場面の水先案内人となる。酒造りの工程はもちろん、ベテランの父と新機軸を取り入れていこうという息子の世代間職人対立、女性の蔵人を疑問視する姿勢、などなど。だが後者2つは消費者には特に関係のないこと。それよりも何よりも、「さすが、淡路の地酒はうまいなあ!」と飲むものに感じさせることが重要なのであるが、常にハイレベルなうまい酒を造り続けるのも大変なテクニックを必要とする。私は「へえ、そうなのか、知らなかった」と思いながら、米の一粒、酒の一滴もおろそかにしない職人たちの姿勢に敬意を抱いた。
官僚役は菊川怜、蔵元の親子には升毅と金子隼也が扮する。監督は篠原哲雄。
映画『種まく旅人~醪のささやき~』
10月10日(金)より TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
監督:篠原哲雄 エグゼクティブプロデューサー:北川淳一
出演:菊川怜、金子隼也、清水くるみ、朝井大智、山口いづみ、たかお鷹、白石加代子、升毅、永島敏行
製作:北川オフィス 制作プロダクション:エネット 配給:アークエンタテインメント
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