映画『火の華』。花火をモチーフに、<戦う>ことや<平和>の在り方、人間の本質を問う

 最近はPTSDという言葉を目にする機会がめっきり増えたような気がするが、これは実に重みのある作品だ。物語の中心となるは、PKO(国連平和維持活動)のために南スーダンに派遣された自衛官の島田東介。部隊が現地傭兵との銃撃戦に巻き込まれ、結果、同期の親友が凶弾に倒れてしまう。次は自分が標的にされるかもしれない、と考えたとき、その人物はどんな行動に出るか。「撃ってくるそいつ」をやっつけるのはごく自然かと思われる。そこで島田は少年兵を射殺、退却のさなかには隊長が行方不明となる。

 が、この前代未聞の“戦闘”は、政府によって隠蔽されてしまう。公には「なかった」ことにされたのだ。が、島田の心から「親友が撃ち殺された」、「人を撃ち殺した」という痕跡が消えることはない。それに、隊長はどうしているんだろう。

 舞台は新潟に移り、自衛隊を辞して新たな人生を歩み始めた島田がクローズアップされる。社会の表も裏も知る彼だったが、花火職人としての腕前もよく、まわりの人々にも恵まれていた。が、彼が抱える「暗闇」は心に棲み続けている。島田の苦闘は、画面越しの我々にも「痛み」を伝えることだろう。そして彼と同じような状況になった時、自分ならどうするだろうかと、こちらを内省させるちからがある。

 2016年、実際に報道された自衛隊日報問題を題材にした一作であるという。監督・企画・脚本・編集・音楽は小島央大、主人公の島田には山本一賢が扮した(共同企画・脚本も)。ほか柳ゆり菜、松角洋平、ダンカン、伊武雅刀らも出演。

映画『火の華』

10月31日(金) ユーロスペース ほか全国順次公開

<キャスト>
山本一賢
柳ゆり菜 松角洋平 田中一平 原雄次郎 新岡潤 キム・チャンバ
ゆかわたかし 今村謙斗 山崎潤 遠藤祐美 YUTA KOGA ダンカン / 伊武雅刀

<スタッフ>
監督・編集・音楽:小島央大
企画・脚本:小島央大、山本一賢
主題歌:大貫妙子&坂本龍一「Flower」(commmons/Avex Music Creative Inc.)
製作・配給:アニモプロデュース
2024年/日本/シネマスコープ/5.1ch/カラー/124分
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公式サイト
https://hinohana-movie.com/