「九州女子翼」、生バンドを従えてアコースティックライブを開催。見事な歌声で新たな魅力を開花

 九州発のガールズグループ 九州女子翼が4月22日(木)、秋葉原のアイドル専用劇場 AKIBAカルチャーズ劇場の新公演企画「acoustic letter LIVE」に出演。これは、4ピースのバンドによる生演奏をバックに、アイドルたちが自慢の生歌を披露するという、アコースティックな出し物。チケットは少し高めだが、ウエルカムドリンク(シャンパン、ノンアル仕様も選択可)に加え、セットリストレターなど、来場者限定の特典も多数用意されており、ファンには魅力的なイベントと言えるだろう。

 このライブは週替わりで行われており(毎週木曜)、九州女子翼はその第3弾として登場。4月公演ということもあって、今回のテーマとなる「春」に沿った名曲を集め(全11曲、リクエスト含む)、ソロで、デュエットで、そして4人で、見事な歌声で聞かせてくれた。ちなみに、いつもは戦闘的な真っ赤な衣装だが、今回は春らしい柔らかな雰囲気を纏ったドレッシーなもの。その威容は、かつてのI’S9を彷彿とさせながらも、神々しささえも感じさせるような端正さも兼ね備えていた。

 オープニングは、acoustic letter LIVEのletterの部分を使い、鈴川瑠菜 直筆の手紙(ステージ正面の)をスクリーンに映し出しながら、彼女が自身の文面を読み上げるという趣向。多少緊張している様子もうかがえたが、見事大役を果たしていた。

 それが済むと、いよいよ本編のスタートだ。先述した純白の衣装を身に纏った4人がステージに登場し、まずは「春の歌」(スピッツ)を披露する。声質は、下、上、その両方を備えたメンバーが揃っていることもあって、ソロパートも、斉唱パートも見事な仕上がり。普段の九州女子翼とは違う、歌い上げるような歌い方は、彼女たちの新たな魅力を開花させてくれたよう。

 続いては詩絵里のソロで、曲は定期公演でも披露したことのある「マリーゴールド」(あいみょん)だ。多少の緊張も感じられる歌声ながら、低域をベースに中高域まで使いこなすその様は素敵なもの。メロディもうまく捉えている。

 次は、山本愛理のソロで、曲は「明日、春が来たら」(松たか子)。女子翼とも、定期公演におけるカバー曲とも違う、新たな歌唱法を取り入れた見事な歌声であり、超愛理を超越した、まるで超愛理ゴッド! 低域を含みつつ高域まで伸びるその歌声は、往年の河合奈保子を想起させてくれる見事なもの。

 さて、続いては、実玖のソロで、曲はKiroroの「未来へ」だ。中高域がベースとなる(と感じる)実玖の歌声にピッタリ。歌い上げるようなその歌声は、彼女の新たな魅力を引き出してくれているようだ。

 次はリクエストに応えて、4人編成による「好きだ。」(Little Glee Monster)。ボサノヴァ風にアレンジしたメロディに乗って、4人の歌声が心地よく耳に届いている。詩絵里の裏声、愛理のシャウトもいいアクセントになっている。おそらくユニゾン的な歌唱だと思うが、地声の音域がばらけていることもあり、斉唱した際の美しさは格別(超高域の新谷がいなくなったが…)。今後は、カバーだけでなく、持ち歌のアコースティックなライブも、見て、聴いてみたいと思わせるに充分な出来栄えとなっていた。

 4人のステージを受けては、再び詩絵里のソロとなり、ここでは懐かしの「ひだまりの詩」(Le Couple)を歌唱してくれた。段々と調子も上がってきたようで、低域から裏声まで素敵な歌声が堪能できた。定期のカバー曲では、メロディの難しい楽曲を選択することも多いが、こうしたゆったりとした楽曲も詩絵里の声質には合っているように感じた。

 その詩絵里に愛理が合流して、次はデュエットによる「桜」(コブクロ)だ。地声の音域が綺麗にハーモニーしているようで、斉唱部分では、二人の歌声が重層的に響き、耳を癒してくれる。女子翼の楽曲でも、この二人の斉唱を聴いてみたいと思わせるに充分な完成度だ。

 次は、実玖+鈴川瑠菜のデュエットによる、この季節にはぴったり、今なお歌い継がれる超の付く名曲中の名曲「春よ、来い」(松任谷由実)。こちらのデュエット(と書いていて、なんとなくその語感が昭和を思い出す「笑」)も、地声の下(瑠菜)・上(実玖)の組み合わせが心地よいもの。

 さて、次はいよいよ鈴川瑠菜がソロで登場だ。曲は変化球とも言える「変わらないもの」(奥華子)。しかし、その出来栄えは素晴らしく、声質、声量、音程、表情、表現力、そのすべてが高次元にまとめられており、すぐにでもソロデビューできるほどの完成度。かつて、アプガ(仮)の関根梓が、歌姫に進化した瞬間を目撃したことがあるが、鈴川の歌唱力もそれに近い進化を果たしている。6月7日(るなの日)には、福岡でソロコンサートも予定されており、きっと素晴らしい歌声を聴かせてくれることだろう。ファンは要チェックと言える。

 そんな余韻に浸っていると、いよいよ演目は終盤へ。次は、先日グループを卒業した新谷香苗に贈る歌ということで、近年では、卒業曲の定番となっている「旅立ちの日に」を4人編成で聴かせてくれた。ゆったりとしたメロディでしっとりと歌い上げる姿は、グループの持ち曲でもある「I Am Love」とはまた違う感動を呼び起こしてくれた。

 途中のMCコーナーでは、今回のライブの感想を、「緊張したけど、皆さんの笑顔を見られてすごくうれしい」(鈴川)、「いつもはバキバキで煽りもたくさん入れていますが、今日は大人しく歌うことで、とてもいい勉強になりました。もっと頑張りたいです」(愛理)、「いつも定期を行なっている会場で、また違う雰囲気のアコースティックライブを披露することができました。大人女子翼を感じてもらえたんじゃないでしょうか」(実玖)、「ずっとやってみたいと思っていたライブなので、もうリハから楽しくてしょうがなかったです。最後までよろしくお願いします」(詩絵里)と、それぞれ語っていた。

 最後は、そのまま4人編成で「ギュッと」(Little Glee Monster)を歌唱して終了だ。デビューしてからおよそ3年と半年。アコースティックというライブを経験して、新たな進化と魅力を発揮した彼女たち。ますます九州女子翼から目が離せなくなった。

九州女子翼 https://twitter.com/ITR_KGW
実玖 https://twitter.com/itr_miku
山本愛理 https://twitter.com/itr_airi
詩絵里 https://twitter.com/itr_shieri
鈴川瑠菜 https://twitter.com/itr_luna