映画『彼女はひとり』が待望の公開。中川監督は本作で、「感情をぶつけるような暴力的な女の子を主人公にした話を描きたかった」

 10月23日(土)に映画『彼女はひとり』が公開初日を迎え、監督・キャストが登壇、満席の観客を前に舞台挨拶を行った。

 中川奈月監督の立教大学大学院の修了制作として撮影された学生映画であるにも関わらず、脚本の完成度の高さから、撮影には黒沢清監督、深田晃司監督、沖田修一監督の作品などを多く手掛ける芦澤明子キャメラウーマンが参加するなど、異例の体勢で制作された本作。自殺を図った後、生還した女子高生・澄子が誰にも愛されない苦しみから、他人を傷つけ、暴走していく姿を描かれる。

 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にてSKIPシティアワードを受賞したほか、TAMA NEW WAVE・ちば映画祭・ドイツで開催されるニッポンコネクションで上映され、また黒沢清監督・諏訪敦彦監督が激賞するなど公開前から話題を集めてきた。

 拍手のなか舞台上に登場した5人。福永は「満席で初日を迎えられて嬉しい」と喜びをにじませた。「感情をぶつけるような暴力的な女の子を主人公にしたお話を描きたかった」と制作のきっかけを語る中川奈月監督。オーディションで選ばれた福永について、「部屋に入ってきたときから禍々しい雰囲気を作ってもらってました。しゃべらない立ち姿だけでも、彼女の過去が見える気がしたんです」と起用の理由を明かした。

 福永は周囲に復讐してゆく澄子という強烈な役柄について、「あまり他人事には思えませんでした。どんな人にも心の中では怒っている部分があるはず。それを澄子は周囲に発散させているだけだと思って演じました。」と語る。「澄子の日記を書いていた」と役作りについても振り返った。

 澄子の父親役を演じた山中は現場での福永について、「すでに話し合いの必要がないほどに役が完成されていて。邪魔しちゃいけない感じがしました」と語った。

 舞台挨拶にはほかに美知枝・中村優里も登壇した。中村優里は、セリフの一切ない幻影・聡子という役柄。「最初はどう演じようと戸惑ったんですけど、聡子が出てくるシーンは逆に見えないものが見えているパワーのあるシーンだと思って演じました。」と振り返る。生徒と交際している教師を演じた美知枝は「生徒への愛情と理性の間で葛藤している様子を表現できるように演じました。」と役作りについて述べた。

 『彼女はひとり』は新宿K’s cinemaにて連日12時~上映中。白石晃士監督や黒沢清監督をゲストに迎えたトークイベントも予定されている。詳細はケイズシネマHP(https://www.ks-cinema.com/information/12732/)にて。その後全国順次公開予定。

映画『彼女はひとり』

新宿K’s cinemaほか全国順次公開中

福永朱梨 / 金井浩人 美知枝 中村優里 三坂知絵子 櫻井保幸 榮林桃伽 堀春菜 田中一平 山中アラタ

脚本・編集・監督:中川奈月 プロデューサー:ムン・ヘソン 撮影:芦澤明子 照明:御木茂則 録音:芦原邦雄 整音:板橋聖志 編集協力:和泉陽光 音楽:大嶋柊 美術:野澤優 衣装:古月悦子 助監督:杉山修平 スチール:明田川志保、吉田留美 特別指導:篠崎誠 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト 配給協力:ミカタエンタテインメント
2018/カラー/ビスタ/60分
(C)2018「彼女はひとり」

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