9カ国・地域の人々が大阪の空の下サバイブする姿を切り取った群像劇『COME & GOカム・アンド・ゴー』公開

 中国・香港・台湾・韓国・ベトナム・マレーシア・ミャンマー・ネパール・日本の9カ国・地域の人々が、頭上の飛行機が鈍く光を放つ大阪の空の下、平成から令和に変わった今の日本でサバイブするリアルを旅する映画作家リム・カーワイが鋭く切り取った『COME & GOカム・アンド・ゴー』

 公開を記念し、千原せいじ、渡辺真起子、兎丸愛美、リム・カーワイ監督が揃い、舞台挨拶を行いました。
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 映画『COME & GOカム・アンド・ゴー』公開記念舞台が、11月20日に東京のヒューマントラストシネマ渋谷で開催され、本作に出演の千原せいじ、渡辺真起子、兎丸愛美、リム・カーワイ監督が登壇した。

 マレーシア人で大阪を拠点としてワールドワイドに活動している映画監督リム・カーワイ監督は、この日2年半前に撮った本作について「コロナ禍で行ったり来たりできない世界になってしまったけれど、これからきっと出来るようになるから、その前に公開できてよかった」と、撮影から公開まで長くかかった今回の作品について、「多くの人たちに見て欲しいです」と語った。

 台本はなく、アドリブで演じたという千原せいじは、北新地で声をかけられて「今度、映画でてください」と言われた時は、どうせ詐欺だろうと思ったという。その1年後に所属事務所の吉本興業に連絡があり「なんか知らんけど、映画出るって約束したっていう監督から電話きとる、北新地でめし食ったやつや、っていってる」、それで約束してたから「でますわ」となった、と明かし「あの時もう少しつめて、拘束時間はコレで、アレがコレぐらいになりますよ、って言えばよかった」と言及し、会場の笑いを誘った。

 また「常々思うのは、海外から日本に来て働いている外国の人って、例えば建設現場で働くにして、日本語を覚えて重機の免許とって働いてるでしょ? そういう意味では、リム監督も、監督としてのスキルはわからんけど、人間としてのスキルは大変高いんだな」と笑いを交えて絶賛。

 一方、千原せいじ演じる刑事の妻役を演じた渡辺真起子は「リム監督の足をつかって知った世界の広さとか、出会ってきた人との関係とか、その人柄が映画にでてる。」と監督を褒める一方で、「私にしてトライなわけですよ。大阪に行くのはいいけど、誰が待ってるのかと思ったら、ボロボロになった監督が迎えにくるという。「香盤表遅いんだけど、いま何時だと思ってんの?」というと『ぼくが書くんですよね』って。そんな中でよく完成したと思う」と、監督をねぎらった。

 映画の中では、徳島からでてきてすぐAV現場やキャバ嬢に誘われる貧困女子を演じた、兎丸愛美は「はじめは不慣れだったので、セリフがないことに結構緊張した」と言いつつ「徐々に慣れていくうちに、とて現場が楽しくなった」と語った。

 タイトルのCOME & GOにちなんで「コロナ禍が落ち着き、行ったり来たりできるようになったら行きたい所は?」と聞かれて「どこの国とかはないんですが、会いたくて会えなかった人たちがたくさんいるので、会いにいきたいです」と話した。

 残念ながら来日が叶わなかった海外キャストのうち、台湾より「楽園」などツァイ・ミンリャン監督作品の常連俳優で知られるリー・カーションや、ベトナムから「ソン・ランの響き」主演のリエン・ビン・ファットからの、ビデオメッセージが到着。観客に披露されたほか、昨年来のコロナ禍と2月に起きたクーデターにより、来日はおろかビデオメッセージすら難しかったミャンマーのナン・トレーシーからは「私は本当に完成された映画を見たいのです。ミャンマーの情勢が落ち着いたらすぐに、日本にかけつけます」という、切実な思いのこもった手紙が届き、渡辺が代読した。

 最後に観客にメッセージをと聞かれ、メッセージを代読した渡辺が「この数年で世界の状況ががらりと変わり、子供の頃に夢見ていた地球というものの距離を見失いかけているように私自身思うのですが、いろんなことが起きる数年前に撮ったこの映画について、心にお留めおきいただけたら嬉しいです。」と、しんみりと語り、それを受けてリム監督も「今の世の中で何が起きてるか、リアルに映し出している映画だと思ってまして、たくさんの人々に見て欲しいと思う。1回だけじゃなく、2回、3回と見て感想がかわって面白さも変わると思うので、何度で見てください」とまとめた。

<STORY>
桜の花の蕾が膨らんで、満開の季節の訪れを誰もが感じている大阪・キタ。中崎町にある古い木造のアパートで、白骨化した老婦人の死体が発見された。警察は実況見分で、アパートの周りの捜査や関係者へ事情聴取を行っていた。孤独死なのか、または財産絡みの謀殺なのか、いろいろな噂が飛び交っている。そんな中、中国、台湾、韓国の観光客、マレーシアのビジネスマン、ネパール難民、ミャンマー語留学生、ベトナム技技能実修者などの外国人たち、彼らとの日常を共有している日本人たちの三日間の小さな出来事の断片が、大阪の中心、梅田北区、通称《キタ》と呼ばれる限られた地域の中で人知れず起きている。時に滑稽で、時にもの悲しく、時に倒錯的に……。事件の調査が終わりを告げるとき、この間に彼らに起きた様々な人生の岐路新たな展開を迎えようとしていた。

映画「COME & GOカム・アンド・ゴー」

11月19日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷 他にて全国順次公開

リー・カーション リエン・ビン・ファット J・C・チーモウサム・グルン ナン・トレイシー ゴウジー イ・グァンス デイヴィッド・シウ 千原せいじ 渡辺真起子 兎丸愛美 桂雀々 尚生 望月オーソン

監督・脚本・編集:リム・カーワイ
宣伝 :ムービー・アクト・プロジェクト
配給:リアリーライクフィルムズ / Cinema Drifters www.reallylikefilms.com/comeandgo
[2020年製作/158分/日本語・英語・韓国語・中国語・ベトナム語・ミャンマー語・ネパール語など/ビスタサイズ/5 .1ch/DCP・ Blu-ray]
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