映画『パリ13区』のトークイベントに、「枝優花」と「MIYAMU」が登壇。「普遍性と共感のある作品になっている」

 2021年カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品、ジャック・オディアール監督×セリーヌ・シアマ脚本の話題作『パリ13区』が、4月22日(金)より、新宿ピカデリーほかにて全国公開となる。

 カンヌ国際映画祭パルムドール受賞『ディーパンの闘い』、グランプリ受賞『預言者』など数々の名作で世を驚かせてきた、今年70歳を迎える鬼才ジャック・オディアール監督。待望の最新作では、『燃ゆる女の肖像』で一躍世界のトップ監督となった現在43歳のセリーヌ・シアマと共同で脚本を手がけ、“新しいパリ”の物語を、洗練されたモノクロの映像美で大胆に描き出した。2021年第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でお披露目されるや、フランス映画界屈指の世代を超えたビッグコラボが大きな注目を集め、絶賛を浴びた。舞台は、高層住宅が連なり多国籍なパリ13区。ミレニアル世代の男女4人の、孤独や不安、愛やセックスにまつわる人間模様が描かれる。

 劇場公開に先駆け、若者から圧倒的な支持を受け『少女邂逅』で知られる映画監督で写真家の枝優花と、SNSで話題のWEB小説家で、「失恋バー」オーナーでこれまで数多くの恋愛相談に乗ってきたMIYAMUの2名をゲストに迎えた特別試写会が行われ、現代のパリの若者たちを描いた恋愛映画『パリ13区』を紐解きながら、観客の恋愛エピソードやお悩みについて語り合った。
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 大きな拍手に包まれ登壇した枝優花監督とMIYAMU。30代の男女4人が織りなす人間模様を描いた本作だが、まず初めに映画の感想を求められると、枝監督は「私は主人公たちの世代に近いので共感できました。今っぽい部分もあれば普遍的な恋愛の部分も押さえている。(監督と脚本家が)年の差で組んだことによって、幅広い世代の方が共感できる作品になっているのではないかと思いました」とコメント。今年で70歳になるジャック・オディアール監督が現在43歳のセリーヌ・シアマ、さらに一回り下のレア・ミシウスと共同で脚本を務めるという、世代を超えたタッグに感心の様子。

 また、“失恋バー”でオーナーを務めるMIYAMUも「フランス映画というと構えて観てしまうのですが、本作に関しては、分かる! どの国でも一緒なのかもしれないと思えました。映し出される情景もいい意味でパリ感がないので、物語がすんなり入ってきて消化しやすい。あまり接点がない人でも、見てみると「分かる!」という波が広がっていくのではないかと思いました。女性から見たら『なんやこいつ』と思われそうな男性キャラのカミーユも、彼なりの“好き”が分からないまま様々な出会いがあって、『一人でいるとき誰を思い返すんだっけ』ということに立ち返ったんですよね。」と、本作への共感の気持ちを明かした。

 枝は、『燃ゆる女の肖像』監督として注目を集め、本作の共同脚本を務めたセリーヌ・シアマのファンだそう。「今後も映画を撮っていく中で変わらないであろう、彼女の作家としての眼差しが好きです。人に対しての“枠組み”みたいなものには興味がなく、一人一人の“人間”をちゃんと描く。なので、今回の映画も楽しみにしていたのですが、その眼差しが若者を描く中にしっかり入っていました。信用できるし心地よかった。それを巨匠が演出するという面白さもありましたね。」と笑顔で語った。

 モノクロの映像で描かれている本作。その理由についての考えを尋ねられると、枝は映画の作り手の視点で、「様々な人種がいるパリの若者たちを撮るのは少し難しい。カラーであれば、肌の色の違いで、照明やグレーディング(映像の色付け)などの調整が必要になるが、モノクロで撮ることによって、その情報が削ぎ落とせる。人種の枠組みを取っ払い、一人の人間として見るようにできるのだと思います。」と分析。さらにMIYAMUは「(ベッドシーンでは)モノクロがゆえのリアルさが伝わってきました。現実で肌を重ねるときは、私たちは視覚以外の情報が多い。だから映画の中でも、肉体がぶつかり合う音や声など、自分たちの中にある知見が映画の物語と繋がりやすいんじゃないかと思いました。」と考察した。

 トークイベントの後半では、事前にお客さんから募った恋愛エピソードを取り上げ、深掘り。「誰にも言えなかった恋」や「忘れられない出会い方」といったテーマの話題で盛り上がる。「元彼が忘れられず、もう誰も好きになれない気がして不安になる」というお悩みについて、MIYAMUが「一生忘れられない恋ができたなんてうらやましいほど。いずれ絶対天から降ってきたりするから、閉じこもらないことが大切。」とアドバイスすると、枝は「私は逆に、『もう恋愛したくない、人を信じられない』と心を閉じてしまうタイプかも…。」と照れ笑いを見せた。

 次に上がったのは、「SNSでの出会いを肯定しづらい」というお悩み。映画の中でもマッチングアプリやビデオチャットを通した出会いが描かれるが、MIYAMUは「人となかなか会えないコロナ禍、実際に顔を合わせる時間よりもSNSを見る時間の方が長くなってきている状況。SNSの方が現実よりリアルということは起き得るというか、起きてきているのかなと思います。」と、若い世代に新たな価値観が生まれつつあることを語った。

 最後に、観客の皆さんに対してMIYAMUは「僕は、映画の中で描かれる、(大切な人が)部屋に“いた時”と“いなくなった今”の対比が自分の体験にも通じていて、そこから共感が生まれました。今日観に来た皆さんはぜひ、こういうところが良かったよ、こういうことを思ったよというのをつけて口コミで広げていただけたらなと思います。」と呼びかけた。

 また枝監督は「監督や脚本家の作家性が良い感じに化学反応を生んでいました。この作品をきっかけに監督たちに興味を持ってもらい、過去作を掘っていくことでさらに広がっていけばいいなと思いました。」と映画愛に溢れるコメントを残した。二人の貴重なトークショーに会場は大いに盛り上がり、イベントは終了した。

映画『パリ13区』

4月22日(金)より、新宿ピカデリーほかにて全国公開

STORY
舞台は、高層住宅が連なり多国籍なパリ13区。コールセンターで働くエミリーと高校教師のカミーユ、32歳で大学に復学したノラ、そしてポルノ女優のアンバー・スウィート。ミレニアル世代の男女4人の孤独や不安、愛やセックスにまつわる人間模様を描く、“誰も見たことのないパリ”の物語。

出演:ルーシー・チャン、マキタ・サンバ、ノエミ・メルラン、ジェニー・ベス

監督:ジャック・オディアール
脚本:ジャック・オディアール、セリーヌ・シアマ、レア・ミシウス
原作:「アンバー・スウィート」「キリング・アンド・ダイング」「バカンスはハワイへ」エイドリアン・トミネ著(『キリング・アンド・ダイング』『サマーブロンド』収録:国書刊行会)
2021年/フランス/仏語・中国語/105分/モノクロ・カラー/4K 1.85ビスタ/5.1ch/原題Les Olympiades 英題:Paris,13th District/日本語字幕:丸山垂穂/R18+
提供:松竹、ロングライド 配給:ロングライド
(C)ShannaBesson (C)PAGE 114 – France 2 Cinema
公式サイト