いきなり街が陥没、このままでは16万人が死ぬ。一人のやたら運動神経のいい地質学者に、その命運は握られた。映画『クラウディ・マウンテン』公開

　「うわー、ものすごくぜいたくな映画だな」というのが第一印象だ。ドローンやCGをたっぷり使い、細かな岩の数々が崖を伝って地面に落ちていくところなどひとつひとつの音も迫力満点。特定の場面の描写ひとつにしても、いったいどのくらいの数のカメラを用いているのか考えずにはいられないほど、前後左右から捉えられている。製作陣はロケ地の調査に5カ月かけたとも伝え聞く。だが根本に描かれるのは恋人への愛、親子の絆。有史以来変わらないものが、贅をつくしたテクノロジーによって表現されている作品との印象を受けた。

　舞台は中国の西南部。高速鉄道を通すため、約10年にわたって続いていたトンネル掘削工事がようやく終わりを迎えようという頃、悲劇は訪れた。トンネル内で大湧水が起こり、街では想像を絶する地盤の陥没が発生。人が、建物が、交通機関が、ブラックホールに吸い込まれるようにして消えていく。研究家の調査によると2時間以内に山が崩れ落ち、大量の土砂が市街地に流れ込むことは間違いないという。16万人の住民を救う、最良の方法は何か。このような、一生に一度起こるかどうかの事態に、前述した「恋人への愛、親子の絆」という普遍的なファクターが絡まり、映画の内容にコクを加える。