クセが強くて愛おしいホームコメディ映画『猫と塩、または砂糖』の先行上映会が実施

 7月23日に初日を控える映画『猫と塩、または砂糖』先行上映会・舞台挨拶が7月6日(水)、渋谷ユーロライブにて実施された。

 自称:元ニートの40歳新人監督というユニークな経歴の持ち主で、本作で商業映画デビューを果たす、自身も“クセが強い”小松孝監督、主人公を翻弄する本作ヒロインで、白いアイドルとして生きる謎の美少女役がぴったり、歌とラップを取り混ぜたポップな楽曲世界でSKY‐HIやライムスター宇多丸に絶賛されたZ世代に人気のアーティスト吉田凜音(りんね)、社会を拒絶し「猫」を職業とする主人の母親役で、本作でいつもと違う怪演ぶりを披露する宮崎美子、が登壇。

 この映画の主人公は“母のための猫”という職業に就いた設定ですが、これは監督自身を投影したキャラクターと聞いています。監督は現在も“猫“をされているんですか? という司会の問いかけに、「はい、前作の主人公はニートで、今回は猫という職業の男です。少し前まで運動もかねて毎日スーパーの付き添いに行ったりと、母のための猫の仕事をしていたのですが、今現在はニートに戻って、毎日ゲームばかりしています。8月に首の手術があって、それが終わったら本気出します! 潜在能力ハンパないんで!」と最初からユニークすぎるキャラクター全開の小松監督。

 「最初にこの映画の話が来た時はどう思いましたか?」と聞かれた宮崎美子さんは、「困ったな…と。意味がわからないんですよ。台本もすごい分厚くて、普通の倍くらいあって! 映画を撮り終わった今でも、私は本当に理解できているんだろうか…? という感じです」と困惑気味。小松監督が「結果、僕の思った通りに演じてくれたので、天才だと思います!」とすかさずフォロー。

 現場の様子を聞かれ、宮崎さんは「初日は大混乱、みんなわけがわからなかったと思います。監督の世界なのでそこに入り込めるまでが戸惑いがあり大変でした」、吉田さんは「頭は“!”マークと“?”マークがいっぱいでした」と当時を振り返った。

 宮崎さんが「皆さんもうおわかりかと思いますが、と切り出し、「小松監督は凜音ちゃんの大ファン、劇中の凜音ちゃんは本当に可愛く撮れていて、明かりがたくさん当たってます」と告白。

 “絵美(吉田さんの役名)ライト”という専用ライトがあったことをあげて、「私もライトが欲しかった…」とぽつり。それをうけて、小松監督は「宮崎さんには一度もライトを当てたことがありませんでした。ただ、“絵美ライト”を当てるというより、絵美自身が光を放っていることをあらわしたかった」とその意図を力説、会場は笑いに包まれた。

 最後に、観客の皆さんに向けたメッセージとして吉田凜音さんからは「良い意味で、観る前も観た後も、“!”ビックリマークが残る作品。ワンシーンワンシーン破壊的な不思議さが溢れる映画で、見応えたっぷり! ぜひいろいろなシーンに注目して観て欲しい」とアピールした。

 宮崎美子さんは「奇妙な味わいの映画です。でもなんだか愛おしい、登場人物も、見ている自分自身の人生も愛おしくなるような、そんな映画だと思います。クスッと笑えたりエッと驚いたり、いろんなハテナ?マークが飛び交う不思議な世界ですが、なんだかクセになる感じです」と作品の魅力を語った。

第25回PFFスカラシップ作品『猫と塩、または砂糖』

7月23日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー

監督・脚本:小松 孝
出演:田村健太郎、宮崎美子、吉田凜音、池田成志、諏訪太朗 主題歌:NILKLY「Fact or Fable」
配給:一般社団法人PFF/マジックアワー
2020年/日本/カラー/1.85:1/5.1ch/DCP/119分

僕の職業は、猫である–。社会を拒絶し自主的に母のペット「猫」になった長男、慎ましい母、アル中の父の3人で暮らす佐藤家。母と元カレの再会をきっかけに、その娘(美少女)も巻き込み、狭いひとつ屋根の下、5人の奇妙な同居生活が始まる–。

劇場長編デビューとなる小松孝監督は、早稲田のシナリオ研究会で天才と呼ばれるもデイトレーダーに転身して失敗、ニート生活を経て撮影した映画『食卓』でPFFアワード2016 グランプリを受賞し、映画監督に返り咲いたというユニークな経歴の持ち主。本作でも、型破りな脚本、絶妙なキャスティングに加え、「アリの巣を俯瞰的に観察する面白さ」を再現したカメラワーク、敬愛してやまないアイドル「NILKLY(ニルクライ)」の起用、多肉植物やデジタルガジェットなどの小道具が作り出す世界観など、監督ならではの拘りぶりを発揮。一瞬たりとも目が離せない、観れば観るほどクセになる作品に仕上がっている。

「幸せとは何か?」という壮大なテーマを掲げながら、独特のユーモアセンスとこだわりを貫き、観る者の意表を突き続ける。元ニートの40歳新人監督が混迷時代に放つ“クセが強くて愛おしい”ホームコメディが誕生した。

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