2020年のカンヌ国際映画祭で「オフィシャルセレクション・カンヌレーベル」に選出されたフランス映画『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』が7月29日から全国公開される。

物語の核を握るのは、エチエンヌという中年俳優。キャリアは長いもののスターの座とは縁遠く、家族との関係もぎくしゃくしている。ある日、彼は刑務所から招かれる。そして、囚人たちに演技のワークショップを行うことになった。演目は、サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』。スターの座とは縁遠いといっても実力はお墨付き、しかも演技への情熱があり、他者をインスパイアする能力もあるから、囚人たちも前向きになり、潜在能力をどんどん発揮していく。このあたり、立場/世代/人種を超えた人間対人間の通じあいを感じさせる印象的なシーンだ。
エチエンヌの情熱を評価する刑務所スタッフたちの尽力で、演劇は刑務所外でも行われるようになるが、いくら外で拍手や声援を受けても、劇を終えたらやっぱり刑務所に帰らなければいけない。いくら劇がウケても、それが恩赦につながるわけではないのだ。しかし囚人版『ゴドー』の評判はとどまるところを知らず、栄光のパリ・オデオン座公演に向けて毎日が急ピッチで進む……。

ラストに流れるのは、ピアノ奏者のビリー・テイラーが書き、ニューヨーク滞在中の弘田三枝子がレコーディングし、その後ニーナ・シモンやソロモン・バークの歌で広まった「I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free」。自由というものはどんな状態なのか知ってみたい、という意味あいだろうか。囚人たち、エチエンヌにとって自由とはなんなのか、ひるがえって自分にとっての自由とは? 深く考えさせられる一作だ。監督は脚本家としても知られるエマニュエル・クールコル。エチエンヌ役はコメディアンとしても知られるカド・メラッドが演じる。
映画『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』
7月29日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町・新宿ピカデリー他全国公開
<キャスト・スタッフ>
カド・メラッド、タヴィッド・アラヤ、ラミネ・シソコ、ソフィアン・カーム、ピエール・ロッタン、ワビレ・ナビエ、アレクサンドル・メドヴェージェフ、サイド・ベンシナファ、マリナ・ハンズ、ロラン・ストッカー
製作:ダニー・ブーン 他
監督・脚本:エマニュエル・クールコル
共同脚本:ティエリー・カルポニエ
撮影:イアン・マリトー
音楽:フレッド・アブリル
主題歌:“I Wish Knew How It Would Feel to Be Free” ニーナ・シモン
日本語字幕翻訳:横井和子
宣伝デザイン:内田美由紀(NORA DESIGN)
予告編監督:遠山慎二 (RESTA FILMS)
配給:リアリーライクフィルムズ
2022年フランス映画 | 105分 | フランス語 | シネマスコープ2.29:1 | 5.1ch ]
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