幻想、怪奇、悲恋、静謐。ひとことでは言い表せない三国共同製作作品『ノベンバー』が遂に日本上映

 エストニア、オランダ、ポーランドの共同製作(モノクロ)。監督と脚本を兼ねるライナー・サルネは、「エストニアのお伽噺とキリスト教の神話をミックスし創り上げた作品」であると記している。焼き魚、みそ汁、米の飯的な生活をしている者にはいささか遠さを感じさせる題材だが、ここに「ハロウィン」が関わってくるとなると、ぐっと距離が縮まる観衆も増えるのではないか。

 10月31日に行われるのが、いわゆるハロウィン(Halloween)である。もちろんこれは仮装大会と同義語ではない。欧米ではさらに、11月1日のAll Saints’Day、11月2日のAll Souls’Dayと続くという。この中でのキーワードはAll Souls’Dayだ。「万霊節」と訳されるこの日は、もうこの世にはいない先祖を追慕する日。日本の「お盆」にニュアンスが近いと思われる。

 冒頭から登場する、妙に人間的な動きをする謎の機械“使い魔クラット”に興味を持っていかれると、それはすなわち、この神秘的な物語に一歩踏み込んでしまったことを意味する。禁断の恋、悪魔との契約、容赦なく描かれる貧富の差、謎の老婆。映像も演技も音楽も静謐そのもので、見ているうちに自分の体に自分の鼓動が響いてきた。一筋縄ではいかない、とても起伏のある物語なのに、それほどの静けさが漂う。

 海外では「ミヒャエル・ハネケとデヴィッド・リンチの出会いのよう」、「テリー・ギリアムを思わせるゴシックなグロテスク描写と、ブラザーズ・クエイのような仕掛け、サミュエル・ベケットのような不条理なユーモア」とも評され、ライベッカ国際映画祭最優秀撮影監督賞などにも輝く2017年公開作品が、2022年のハロウィン・シーズン、タイトル通り11月(ノベンバー)を含む時期に、日本で上映されることが決まったことを喜びたい。

 原作はアンドルス・キビラーク、出演はレア・レスト、ヨルゲン・リイイク他。20年に他界したディーター・ラーザーが伯爵役を演じている。

映画『ノベンバー』

10月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

脚本・監督:ライナル・サルネット
撮影監督:マート・タニエル セット・デザイナー:ヤーグ・ルーメット、マティス・マエストゥ 編集:ヤロスラフ・カミンスキー サウンド・デザイナー:マルコ・フェルマース 作曲:ジャカシェク プロデューサー:カトリン・キッサ

出演:レア・レスト、ヨルゲン・リイイク、ジェッテ・ローナ・ヘルマーニス、アルヴォ・ククマギ、ディーター・ラーザー

【2017年/ポーランド・オランダ・エストニア/B&W/115分/5.1ch/DCP/原題:NOVEMBER】
日本語字幕:植田歩 提供:クレプスキュール フィルム、シネマ・サクセション 配給:クレプスキュール フィルム
 (C)Homeless Bob Production,PRPL,Opus Film 2017

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