開店間もない食堂には明るい未来が待っていたはずなのに……。韓国現代史の闇を庶民の視点で描いた『1980 僕たちの光州事件』

 「光州事件」について人前で書くには私はあまりにも準備が足りない。「光州事件 わかりやすく」と検索しても、どうにもわかりきれない。ただ首都・ソウルから300㎞ほど離れている場所であることを知ったうえでこの映画を観ると、いっそうリアリティが湧いてくるとは感じた。北海道でいうと札幌から稚内ぐらいまでの距離だ。いまでは超特急に乗ればソウルから光州までは2時間もあれば行けるそうだが、事件が発火したのは1980年5月18日。そこまで交通事情は発達していない45年前に、この「事件」は起きた。

 主人公・チョルスの祖父が、念願の中国料理の店をオープンしたのは、よりにもよって1980年5月17日のことだった。地域の人々も、家族親戚も明るく優しい。が、暗雲が、最初は徐々に、しだいに加速度付きで、まさに軍靴の音と共に忍び寄ってくる。以降しばらく続くのは、時に目を覆いたくなるような、心を引き裂かれるような悲劇だ。同じ年代の、ひょっとしたら何かのきっかけで友達になれていたかもしれない、まだ表情にあどけなさを残す男たち。片方は暴力をふるう方で、片方は逃げまどい暴力を振るわれる方で……「分断」を吹き込んだ者、高い位置から人をコマのように動かす権力者こそが両者に共通する「エナミー」であろうことを知る機会を、青年たちは与えられていない。ただ悲鳴や煙があがり、ガラスが割れ、鮮血が壁や地を染めてゆく。

 「僕たちの光州事件」という邦題は、実に重い。が、監督・脚本のカン・スンヨンは、しっかり、この作品に「平和な落としどころ」も用意しており、個人的にはホッとさせられた。出演はカン・シニル、キム・ギュリ、ペク・ソンヒョン、ハン・スヨン、ソン・ミンジェ等。

映画『1980 僕たちの光州事件』

4月4日(金)より、シネマート新宿ほか全国公開

監督・脚本:カン・スンヨン
出演:カン・シニル、キム・ギュリ、ペク・ソンヒョン、ハン・スヨン、ソン・ミンジェ
2024年/韓国/韓国語/99分/シネマスコープ/5.1ch/字幕翻訳:本田恵子/字幕監修:秋月望/原題:1980/映倫G
配給:クロックワークス
(C)2024 JNC MEDIA GROUP, All Rights Reserved.

公式サイト
https://klockworx.com/movies/1980/