「天野なつ」、傑作ソロ・アルバム『Across The Great Divide』を携えて、バースデー・ライブを敢行。「これからも皆さんをいっぱいワクワクさせていきたい」。29日には故郷・福岡公演も

 福岡を拠点に全国区で活動するアイドル・ユニット“LinQ”の元リーダー。この春から東京に拠点を移し、ソロ・アーティストとして活動する天野なつが、8月20日に東京・下北沢CLUB 251でバースデー・ライブ「AMANO NATSU Birthday Live~From TOKYO」を開催した。

 去る6月に発表した初アルバム『Across The Great Divide』もずばぬけた鮮度を持つシティ・ポップ・アルバムだけに、いったいこの音楽世界がライブでどのように広がってゆくのかと、わくわくしながら会場に向かった。

 オープニングは、そのソロ・アルバムでも1曲目に入っていた「midnight」。INSTANT CYTRONの長瀬五郎が作曲し、天野なつ自身が歌詞をつけたナンバーだ。ファンの前で歌えることの嬉しさがあふれてとまらないという感じの歌声を、ファンがしっかり手拍子でサポートする。

 続いて、2011年から7年間在籍したLinQへの思いを込めた「Restart」、さらにLinQ在籍時代にケガで入院していた頃の心境をしたためた「うたかたの日々」と、じっくり聴かせるパフォーマンスが続く。彼女がいかに“母校”LinQを愛し、誇りに思っているかがしっかり伝わってきた。

 次は、大好物をテーマに作詞した「カレーライス」。偉大なシンガー・ソングライターの遠藤賢司にも「カレーライス」という曲があるけれど、同じ食べ物を題材にしてもこんなに描かれる情景が違うのだから本当に音楽は面白い。ファンは手持ちのスプーンを掲げて歌を盛り上げる。“ホワッツ・ゴーイング・オン/マーシー・マーシー・ミー歌謡”「Secret703」の爽快感、マイナー調ラテン・グルーヴ「true love」の熱気。やはり『Across The Great Divide』は傑作だ、との思いを新たにした。

 ここでスペシャル・ゲストとして、俳優・音楽家として活動する柏原収史がアコースティック・ギターを持って登場。個人的には“船橋ひまわり娘”の楽曲でも印象深い存在だ。

 天野なつは2018年、福岡拠点のエンターテイメントユニット“トキヲイキル”の「燈火(ともしび)の中、貴方を想ふ」で演劇に初挑戦したのだが、そのときの演出と音楽担当が柏原収史だった。その後もギターを借りたり、コードを教わったり、師弟関係が続いているとのことだ。この日は天野の詞に、柏原が曲をつけた「願い」と「憂い」を披露。『Across The Great Divide』収録曲とは趣の異なるフォーキーかつ抒情的なメロディに、天野の高音が映える。その後は再びアルバム・ナンバーに戻り、「Positive Life」、「恋してBaby!」、「Open My Eyes」で華やかさを振りまいた。

 折からの新型コロナウイルス禍で演者以外はマスク着用、それなりの距離をとって椅子に座り、当然ながらコールもシングアロングもない。よって誕生日ライブの定番であるハッピーバースデーの合唱や、ケーキのローソク吹き消しや、おめでとうの歓声はなかった。しかし観客のそれぞれが天野なつの誕生日を祝い、これからのさらなる活躍に期待を寄せている……そんなヴァイブレーションが確かに存在するひとときだった。

 8月29日には故郷・福岡のthe voodoo loungeでもバースデー・ライブ「『AMANO NATSU Birthday Live』 from FUKUOKA」が催される。また10月には「願い」と「憂い」のシングル化、11月3日には『Across The Great Divide』のLPリリースが予定されている。「これからも皆さんをいっぱいワクワクさせていきたい」と語る天野なつ。“分岐点を超えた”彼女の今後がいっそう楽しみになってきた。

天野なつ https://twitter.com/natsu_amano