この長距離バスは怖すぎる! 『エクスペンダブルズ2』『トゥームレイダー』ファンにもお勧めの、並外れた緊張感を放つ力作『ワイルド・ロード』

 以前ご紹介した『ナイトライド 時間は嗤う』同様、コロナ禍だからこそのグルーヴ漂う一作との印象を受ける。シチュエーション、登場人物をミニマムにして、見る者の想像力に訴えずにはおかないストーリーづくりで緊張感を持続させてゆく。1980年代の大ヒット映画『フットルース』のケヴィン・ベーコンが父親役で登場、尋常ではない渋みを発散している。

 主役のフレディには、ラッパー“マシン・ガン・ケリー”としても活動するコルソン・ベイカーが扮する。組織から現金とコカインを盗んだ彼は腹部を撃たれながらも超人的なパワーで逃げ出し、長距離バスに乗り込む。アメリカは広いし、そのバスに三晩くらい乗り続けていれば関係のない場所に逃げることができると思ったのかもしれないが、そもそも「現金とコカインを持つ組織」が、そんな簡単にフレディのことをあきらめるわけがなく、殺しの手が四方八方から伸びる。

 血を流し、意識がもうろうとする中で、フレディが「生き延びてこれだけはしておかなければならない」と思った動機は、ひじょうに優しくてエモーショナルなものだった。「悪人にもこんなに優しい一面があったんだ」と感動させられるひとも、「こんなに優しい一面があるのに、どうして犯罪をおかしたのか」と疑問を立ち上げるひともいるだろう。ケヴィン・ベーコンふんする父親との、妙に緊迫したやりとりも印象深い。

 『エクスペンダブルズ2』『トゥームレイダー』のプロデューサーが関与しているためか、並外れたスリルがあるし、効果音(フォーリー)の数々も大変な臨場感だ。監督:アンドリュー・ベアード、脚本:ベン・コンウェイ、12月2日より全国ロードショー。

映画『ワイルド・ロード』

12月2日(金)より、全国ロードショー

監督:アンドリュー・ベアード
配給:アルバトロス・フィルム
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公式サイト
https://wild-road.jp/