宗教とは何か? 愛とは何か? 400年の歳月を超えて現代に問いかける『ベネデッタ』

 2017年に日本公開された『エル ELLE』も記憶に新しい、ポール・ヴァーホーベン監督の新作が届いた。17世紀のイタリアに実在したという修道女、ベネデッタ・カルリーニの話だ。観る前、ほんの少々だが「ああ、400年も前の、ヨーロッパの時代劇か」と思った自分を恥じた。すこぶる面白い。そして観終えた後、飽くことなきマチズモの風が吹く今の世の中と大して変わっていないような気がする、それはなぜなのかと、自問自答してしまった。

 主人公の名はベネデッタ。幼い頃から聖母マリアと対話する“奇蹟を起こす少女”だった彼女は6歳で修道院に入り、文字通り“神こそはすべて”状態のまま成長した。そして修道院に逃げ込んできた若い女性を助けるのだが、このとき、彼女の心はそれまで体験したことのないときめきに射抜かれる。「恋」である。隠そうとしても、簡単に隠せるものではないのが恋心だ。が、ベネデッタは男性優位の時代には珍しく、権力も手にしていた。修道院内での“アンチ”を消すことも難しくはなかった。が、おごれるものは久しからず。巷ではペストが流行し、とかく彼女を気に入らない教皇大使も街にやってくる。

 監督はこう述べている。“17世紀初めに修道女の同性愛についての裁判があったこと、裁判の記録や本書のセクシュアリティの描写がとても詳細なこと、完全に男が支配するこの時代に、才能、幻視、狂言、嘘、創造性で登り詰め、本物の権力を手にした女性がいたという点に感銘を受けた”。リアリティとファンタジーのせめぎあいが、観る者を130分の時間旅行へと案内する。出演はヴィルジニー・エフィラ、シャーロット・ランプリング他。2月17日より全国公開。

映画『ベネデッタ』

2月17日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

監督:ポール・ヴァーホーベン 脚本:デヴィッド・バーク、ポール・ヴァーホーベン 原案:ジュディス・C・ブラウン『ルネサンス修道?物語―聖と性のミクロストリア』
出演:ヴィルジニー・エフィラ、シャーロット・ランプリング、ダフネ・パタキア、ランベール・ウィルソン
[2021/フランス・オランダ/ DCP5.1ch/スコープサイズ/仏語・ラテン語131分/R18+/原題:BENEDETTA]
配給:クロックワークス
(c) 2020 SBS PRODUCTIONS – PATHE FILMS – FRANCE 2 CINEMA – FRANCE 3 CINEMA

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