現代モンゴルの話題作が日本上陸。映画デビューの新鋭と、30年ぶりに銀幕復活したベテランが共演

 モンゴルときいて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。山脈、草原、朝青龍……そんなイメージが浮かんでいた方に、まず申し上げたい。「この映画を観ると、ぶっとぶぞ」と。『セールス・ガールの考現学』は4月28日より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショーされる。

 主人公はモンゴルの都会に暮らす女子大学生、サロール。学校では原子力工学を学ぶ、かなり地味目なキャラクターだ。彼女が、とあることから、アダルトグッズ・ショップのアルバイトをすることになってしまったところから、物語の本筋が始まる。グッズをホテルに出前したり、ぜいたく暮らしをするショップ店主のカティアのもとに売上金を届けたり。カティアはだだっぴろいマンションで猫を飼い、マイルス・デイヴィスやルイ・アームストロングのレコードを聴き(ピンク・フロイドの大ファンでもあるようだ)、毎日を奔放に暮らしている。何度も顔を合わせていくうちにカティアとサロールの間に不思議な交流が生まれ、サロールの着るもの、髪型、振る舞いなどがどんどんあかぬけていく。リスペクトもしていたのだろう。だが、そうした産業に足を踏み入れているなかに脛に傷を持たないひとがどのくらいいるのかはさだかではないし、「カティア」という西洋の名前も、モンゴル人にはありえない。このショップ・オーナーの正体は、つまり誰なのか?

 ダークサイドにも入り込めそうな話を、モンゴル・アカデミー賞常連のセンゲドルジ・ジャンチブドルジ監督は、きわめてポップに仕上げている。サロール役のバヤルツェツェグ・バヤルジャルガルはこれが映画デビュー(2022年大阪アジアン映画祭で薬師真珠賞を受賞)、カティア役のエンフトール・オィドムツは本作が30年ぶりの銀幕であるという。大ベテランと新進の組み合わせが成功した好例といえるだろう。また、モンゴルのシンガーソングライター、Magnolianが数々の楽曲を提供するとともに画面にも登場、その場面はあたかもMVのような効果をあげている。

映画『セールス・ガールの考現学』

4月28日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー!
配給:ザジフィルムズ
(c) 2021 Sengedorj Tushee, Nomadia Pictures

公式サイト
http://www.zaziefilms.com/salesgirl/