ロバはすべてをお見通しだったのか。スコリモフスキ監督、7年ぶりの長篇力作『EO・イーオー』

 主人公は、ロバ。「イーオー」は、その名前だ。ポーランドのサーカス団に所属していたが、諸事情により解散せざるを得なくなり、イーオーは元団員のカサンドラに連れられて、イタリアへ向かう旅に出る。途中、カサンドラの許を離れ、数々の人と出会う。命の危険を感じることもあるし、ホッとするようなひとときを得ることもある。好意的なひともいるし、動物に冷淡なひともいる。人間のエゴに巻き込まれて「幸運を呼ぶロバ」的にもてはやされるかと思えば、「ものを運搬するための道具」としてこき使われることもある。イーオーはたまに鳴くが基本的に何も言わない。目で語る。どこまで動物の視点から描くことができるか(描いているつもりになり切れたか)、そこもイエジー・スコリモフスキ(監督、脚本)、エバ・ピアスコフスカ(制作、脚本)のこだわりどころだったのではないか。

 カンヌ国際映画祭審査員賞受賞、アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート作品。撮影には6頭のロバが使われたが、人間の常識として動物には一切の危害が加えられていない。衝撃のラスト(あえて画面を「想像させる」ようにした演出手法も称えたい)も含めて、動物と人間の関係性にも思いをはせずにはいられない。5月5日より全国公開。

映画『EO・イーオー』

5月5日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ他にて全国ロードショー

監督:イエジー・スコリモフスキ
脚本・製作:エヴァ・ピアスコフスカ、イエジー・スコリモフスキ
出演:サンドラ・ジマルスカ、ロレンツォ・ズルゾロ、イザベル・ユペール
2022/ポーランド、イタリア/カラー/ポーランド語/88分/映倫:G
後援:ポーランド広報文化センター
配給:ファインフィルムズ
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