仕事、子育て、介護、新しい恋。目まぐるしい毎日を駆け抜ける。『それでも私は生きていく』公開

 「自分自身の人生はもちろん自分だけのものではないとしても、では、自分自身で自分そのものを思いっきり生きていると感じられる瞬間は、果たしてどんなときに訪れるのだろう?」

 観終わったあと、しみじみと、そんなややこしいことを考えてしまった。

 主人公は、サンドラという女性。5年前に夫を亡くしてから娘をひとりで育てつつ、通訳としても忙しい日々を送っている。

 父親のゲオルグは、多くの生徒に慕われた哲学の教師で、とにかく読書が大好き。蔵書数も並大抵ではないが、数年前からアルツハイマーに由来する難病に侵されており、しかし愛人が見舞いに来ると途端に、少年のように生き生きする。

 母親のフランソワーズはゲオルグとは離婚して久しく、新しい家庭を持っているが、そこはやはり元妻ということで、あれこれと世話を焼く。

 いっぽうでサンドラは偶然に旧知の男性、クレマンと出会った。思いのほか意気投合し、彼と会うたびに楽しくてたまらない。彼の子どももなついてくる。が、彼には伴侶がいて、二重生活には限界がある。

 仕事もしなければいけないし、父の介護もしなければいけないし、子育ても落ち着いていないし、不倫状態からも脱出したい。サンドラの心が休まる暇はあるのか、見るしかないのだ。主演レア・セドゥ、監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ。

映画『それでも私は生きていく』

5月5日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ
撮影:ドゥニ・ルノワール
編集:マリオン・モニエ
美術:ミラ・プレリ
出演:レア・セドゥ、パスカル・グレゴリー、メルヴィル・プポー、ニコール・ガルシア、カミーユ・ルバン・マルタン
2022年/フランス/112分/カラー/ビスタ/5.1ch/原題:Un Beau Matin/英題:One Fine Morning/R15+/日本語字幕:手束紀子
配給:アンプラグド

公式サイト
https://unpfilm.com/soredemo/