歳月を経ても変わらないもの、それは友情。国際的ベストセラー小説が、最高の形で映画化。『帰れない山』

 イタリアの作家、パオロ・コニェッティの同名ベストセラー小説(39言語に翻訳)を、約2時間半にわたって映画化。第75回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作品、『帰れない山』が5月5日から全国公開される。

 舞台は北イタリアのモンテ・ローザ山麓。主人公は山をこよなく愛する父親を持つ都会育ちのピエトロ(ルカ・マリネッリ)と、根っからの“山っ子”であるブルーノ(アレッサンドロ・ボルギ)のふたりだ。対照的なキャラクターどうしだったところが良かったのか、足りないところを補いあうように二人は気持ちを合わせ、友情をはぐくむ。が、やがてピエトロは父親に反抗して別の道を行くことになり、結果としてブルーノとの交流も途絶えてしまう。ピエトロにとって「山」はすなわち父のアイコンであり、一度、その幻影を振り払う必要があったのであろう。

 が、すっかり青年となったピエトロとブルーノは運命的な再会をする。ここから物語はより一層の深みを持って進む。歳月の流れと共にふたりは中年となり、友情を深めてゆくが、歳月が経てば経つほど肉体の寿命は近づいてくる。一度は嫌いになったとはいえ、やはり親は親だ。ピエトロが意を決して亡き父親の幻影に向かい合う場面は、イタリア生まれだろうが日本生まれだろうが、山育ちだろうが海育ちだろうが関係なく、心に訴えるはずだ。

 法を守る限り、その人生は決して間違った選択ではないだろう。が、岐路に立ったとき、どちらの道を行くかによって、以降の人生の局面は変わってくる。だがピエトロもブルーノも誠実に、自分の人生をまっすぐに生きた。そのすがすがしさと、雄大な自然を捉えたカメラ・ワークが快い余韻を残す。監督・脚本:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン。

映画『帰れない山』

5月5日(金)より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

第75回 カンヌ国際映画祭 審査員賞受賞

監督・脚本:フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ
撮影:ルーベン・インペンス
原作:「帰れない山」(著:パオロ・コニェッティ 訳:関口英子 新潮クレスト・ブックス)
出演:ルカ・マリネッリ、アレッサンドロ・ボルギ、フィリッポ・ティーミ、エレナ・リエッティほか
2022年/イタリア・ベルギー・フランス/イタリア語/1.33:1/5.1ch/147分/原題:Le Otto Montagne/日本語字幕:関口英子
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル
宣伝協力:ポイント・セット
(C) 2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV –
PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A.

公式サイト
https://www.cetera.co.jp/theeightmountains/