アメリカの田舎町に住む、見たところごく普通の少女である「パール」の物語だ。過保護気味なまでに娘思いの母、体が不自由な父親との3人家族で、自然や動物に囲まれながら育っている。設定されている年代は1920年代後半、当時最先端のメディアは「映画」。パールの家から自転車で着く距離にも映画館ができた。
スターになりたい、芸能界に入りたい。そんなパールの気持ちは次第に大きくなってゆく。だが母にはそれが当然ながら理解できない。物事が思うようにいかないのは世の常だが、パールはその耐性がいちじるしく低かった。言い方を変えれば、自分の思い通りにいかない場合、その「原因」を強引にでも自分以外のところに見つけ出して、それを撲滅した。夢のレベルが高まっていけばいくほど、パールの中でストレスが蓄積され、まわりが悲劇に彩られてゆく。1920年代の新文化「映画」へのオマージュと、ホラー的要素が融合する逸品。マーティン・スコセッシ監督が「ワイルドで魅力的。我々をもてあそぶ傑作！」とコメントを寄せたのも、むべなるかなである。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が第95回アカデミー賞で7部門を受賞した映画スタジオ“A24”が製作。監督はタイ・ウェスト、主演はミア・ゴス、脚本は両者で手掛けている。
映画『Pearl パール』
7月7日（金）ＴＯＨＯシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督：タイ・ウェスト 脚本：タイ・ウェスト、ミア・ゴス
出演：ミア・ゴス、デヴィッド・コレンスウェット、タンディ・ライト、マシュー・サンダーランド、エマ・ジェンキンス＝プーロ
配給：ハピネットファントム・スタジオ
｜原題：Pearl｜2022年｜アメリカ映画｜上映時間：102分｜R15＋
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