鬼才ファッション・デザイナーの軌跡に迫る、ドキュメンタリー+エンタテインメント・ショウ『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』

 フランスの鬼才ファッション・デザイナー、ジャンポール・ゴルチエ。この映画は、彼の半生をベースにしたミュージカル「ファッション・フリーク・ショー」(2018年パリで初演、2023年5月には東京・大阪でアジア初上陸公演)の舞台裏と共に、これまでの歩みや、信条が描かれる、いわば「ゴルチエの過去・現在、そして未来」的な作品だ。

 私は80年代後半、日本のバンド“BOØWY”がゴルチエ・ファッションでキメているのを通じて、ゴルチエという名前を強烈に刻みこませた世代だが、今なお彼は尖り、色とりどりの存在感をまき散らしている。きくところによると彼は「“違う”ことは美しい」という考えの持ち主であるという。長く生きていれば、それがゆえに一筋縄ではいかない苦労を味わったこともあろう。が、とにかくゴルチエは現在もサムシング・ディファレントである。

 「ファッション・フリーク・ショー」にはこれまでのゴルチエの衣装が次から次へと登場し、彼と関わりのあったナイル・ロジャース(シック)、デヴィッド・ボウイ、マドンナなどの楽曲もかかるという、まさに「ゴルチエの夕べ」。インタビューもたっぷり収録されていて(私はここでゴルチエの声を初めてきいた)、往年のフッテージも惜しげもなく挿入される。70~80年代を知る者には、いささかの懐かしさ(懐かしがることは決して後ろ向きなことではない)も、そして今世紀生まれの世代には、一種近未来的なきらびやかな感触を、この作品は運んでくれるに違いない。

『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』

9月29日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、シネマカリテほか全国公開

出演:ジャンポール・ゴルチエ、マドンナ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ロッシ・デ・パルマ、ナイル・ロジャース、マリオン・コティヤール
監督:ヤン・レノレ
配給:キノフィルムズ
(C)CANAL+ / CAPA 2018

公式サイト
https://gaultier-movie.jp/