香港最大のヒット映画が日本上陸。熱血弁護人、ラムの手腕にご注目あれ! 『毒舌弁護人~正義への戦い~』

 まず、タイトルがいい。「毒舌」と「弁護」という、どう考えても合いそうにない言葉がくっついて、観る者の興味に訴える。本作は2023年の旧正月に合わせて香港で公開され、同国の映画史上初の1億香港ドルを突破、最終的に1.21億香港ドル(約22億円)の興収をあげたという。「香港映画といえばアクションとかカンフーがとにかく出色」という認識は、いくらなんでももう改める時が来たのだ。今の香港映画が持つスリル、気合、エンタテインメント性、そしてしゃれたカメラ・ワークを、私はこの映画で浴びた。

 主人公のラムは50代の元・治安判事。上司の気分を害してクビになり、友人の勧めで法廷弁護士となった。「そんなにうまくいくものなのか」と一瞬、思うが、この男、猛烈なファイトがあり、熱血漢で、努力すればするほど自分自身が燃え上がっていくようなタイプなのだからすごい。

 初めて手掛けたのは、児童虐待事件。だが、これが、闇に次ぐ闇の連続。事件の真相に迫ろうとすればするほど、ダーティな利害関係、乱れた男女関係、裏切り、策略などが次々と明らかになる。この事件のベールをはぐという行為は、つまり、ラムが香港の経済界を牛耳る名門一族と勝負することを意味した。だがラムはひるまない。後半、法廷部分での長回し、エモーショナルな口調の数々(香港語がわからないにもかかわらず“熱”が痛いほど伝わってくる)、次々と解明されるトリックには、目を見張った。正義に生きる男はかっこいい。

 ラム役を演じるダヨ・ウォンは著名なスタンダップ・コメディアンであり、監督や脚本家としての顔も持つ人物。ほか、名門一族側の人々の、こなまずるい挙動にも注目されたい。監督・脚本は、これが長編映画初となるジャック・ン。

●映画『毒舌弁護人~正義への戦い~』

10月20日(金)よりシネマート新宿
10月27日(金)よりシネマート心斎橋 ほか全国順次公開

監督・脚本:呉煒倫(ジャック・ン)
出演:黄子華(ダヨ・ウォン)、謝君豪(ツェ・クワンホー)、王丹妮(ルイーズ・ウォン)、廖子妤(フィッシュ・リュウ)、王敏徳(マイケル・ウォン)
2023年/香港/カラー/シネスコ/133分/5.1ch
原題:毒舌大狀 英題:A Guilty Conscience
日本語字幕:鈴木真理子 配給:楽天 配給協力:シネメディア 宣伝協力:活弁シネマ倶楽部
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