没後75周年、あの太宰治が遺した短編がついに映画化。『未帰還の友に』公開へ

 今年で没後75周年となる小説家、太宰治が遺した短編に基づく映画化。1946年の発表というから、大傑作「御伽草子」の後、「斜陽」「人間失格」の前ということになる。

 “「先生」と「鶴田(教え子)」という上下関係や年齢の差を超えて育まれた友情”、“出征したまま戻ってこない「鶴田」”、“若者をおいて図らずとも生き残ってしまった「先生」の哀愁”……それらが作者の意図しているものかどうか、筆者の知るところではないが、ざっとこのようなファクターが心に舞い降りた。そして大きなスパイスとなっているのが、映画化に際して付け加えられた、劇場「新宿ムーランルージュ」のエピソードだ。鶴田は、踊り子のマサ子と交際していた。が、それも出征で終わりだ。あたたかな師弟関係も、彼女を大切にしたいという気持ちも、すべてぶちこわし、ちりぢりにするのが戦争だ。

 監督の福間雄三は、太宰治の短篇集「女生徒」を基にした『女生徒・1936』(2013年公開)も手掛けた人物。この『未帰還の友に』を、それと関連付けて鑑賞するのも一興であろう。「先生」には窪塚俊介、「鶴田」には土師野隆之介、「マサ子」には清水萌茄が扮し、萩原朔美(太宰と因縁のある井伏鱒二役!)や水島裕子などのベテランも味わい深い。

映画『未帰還の友に』

2023年12月15日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー

<キャスト>
窪塚俊介
土師野隆之介/八島諒 亮王 清水萠茄 蒼井染 君澤透 名倉右喬 橘レイア 水島裕子/萩原朔美

<スタッフ>
企画:福寿祁久雄 製作:田中じゅうこう プロデューサー:櫻井陽一 協力プロデューサー:溝上潔 原作:太宰治「未帰還の友に」(太宰治全集・筑摩書房刊) 脚本:大隅充・福間雄三 音楽:原將人・山本無二 撮影:根岸憲一(J.S.C) 照明:佐藤仁 録音:岸川達也 美術:吉見邦弘・田中太賀志 編集:小西智香 整音:吉田茂一 メイク:小堺なな 製作:幻野映画事務所 制作協力:幻野プロダクション 配給:トラヴィス
2023年/日本/カラー/ヨーロピアンビスタ/DCP/75分/ステレオ
(C)GEN-YA FILMS 2023

公式サイト
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