実話を基にしたベストセラー小説の映画化。高級娼館に潜入した作家の2年間を描く

 「実話」「実録」「自伝」「ドキュメント」「体験レポート」、そのどれにも当てはまる一作であろう。『ラ・メゾン 小説家と娼婦』は、世界16カ国でベストセラーになったというエマ・ベッケル著の小説『La Maison』の映画化だ。

 主人公は、27歳のフランス人小説家・エマ。作家活動をしているうちに徐々に娼婦たちへの関心を高めた彼女は、よりその世界を深く知ろうとベルリンの高級娼館“ラ・メゾン”の娼婦となる。当初は2週間のつもりだったらしいが、「あと1日」という気持ちを繰り返しているうちに、2年間が過ぎていた。それほど娼婦の世界は奥深く、学びがあり、興味の尽きないものであったのだろう。「娼婦」は職業であるから、彼女たちには別個に恋しているひとがいる場合が多いし、いつ職業病(性病)になってもおかしくない。エマもプロの娼婦として現場に潜入している以上、恐怖は隣り合わせだ。

 約80数分、エマが見たもの、感じたもの、受けたもの、与えたものなどが、率直に描かれていく。いつしか自分が「エマの視野」になったような気分を味わう鑑賞者も少なくないのではなかろうか。エマ役は小栗康平監督作『FOUJITA』にも登場したアナ・ジラルド。彼女はパリの老舗キャバレーで2カ月間学んだうえで、本作に臨んだという。メガフォンは、気鋭女性監督のアニッサ・ボンヌフォンがとった。女性スタッフが集い、「女性」を掘り下げた作品との印象も受ける。

映画『ラ・メゾン 小説家と娼婦』

12月29日(金)より 新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

監督:アニッサ・ボンヌフォン 原作:「La Maison」エマ・ベッケル著
出演:アナ・ジラルド、オーレ・アッティカ、ロッシ・デ・パルマ、ヤニック・レニエ、フィリップ・リボット、ジーナ・ヒメネス、ニキータ・ベルッチ
2022年/フランス、ベルギー/フランス語、英語、ドイツ語/89分/カラー/1:2.35/5.1ch/原題:La Maison/字幕翻訳:安本熙生/R-18
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本 配給:シンカ
(C)RADAR FILMS – REZO PRODUCTIONS – UMEDIA – CARL HIRSCHMANN – STELLA MARIS PICTURES

公式サイト
https://synca.jp/lamaison/